THE GREY/凍える太陽

THE GREY/凍える太陽 “The Grey”

監督:ジョー・カーナハン

出演:リーアム・ニーソン、フランク・グリロ、ダーモット・マルロニー、
   ダラス・ロバーツ、ジョー・アンダーソン、ノンソー・アノジー、
   ジェームズ・バッジ・デイル、ベン・ブレイ、アン・オープンショウ

評価:★★★




 アラスカの大雪原に飛行機が墜落する。生き延びた数名は石油掘削現場で働く者たちだ。その中にリーアム・ニーソンの姿を見つける。最近のニーソンは疾風怒濤のアクションの塊となって画面を切り裂いている。きっと今回も、大自然相手に超人的な破壊力を見せてくれるはずだ。ヘイカモーン!…という読みは気持ち良いほどあっさり裏切られる。『THE GREY/凍える太陽』はリアリズムを重視した映画。アクション要素もあるものの、芸術要素の方が色濃く出ている。

 「死」を見つめながら「生」を描くというのは、映画ではよく見られる表現法だ。裏返しの概念が実は密接に結びついている。世の中の真理だ。とは言え、ここまで死の描写にこだわるのも珍しい。死をダイナミックに綴ってインパクトを与えようというのではない。死をひたすら誠実に見つめることで、生にまつわる容赦なく厳しい現実を浮き彫りにする。

 したがって次々に命を落としていく男たちの死に様は、決して美しいもの、神聖なものとは映らない。命が絶え行く瞬間の惨さが生々しく切り取られる。立ちはだかるのは圧倒的な寒さとエサに飢えたオオカミたち。負った傷口からの出血により死ぬ者あり、オオカミに噛み殺される者あり、寒さに耐えられない者あり…。人の数だけ死に様があり、しかもいずれもが強い印象を残す。流れる血のどす黒さが頭から離れない。擦り合わされるのは人のちっぽけな命、雄大な自然、そして神の存在。その枠組がくっきり見えてくる。

 寒さとオオカミとの対決に人間はやられっぱなしだ。なんとか反撃しようとするも、逃げるのが精一杯だ。基本的にその繰り返しであるがゆえ、単調に見えるところがある。しかし、それを中弛み一歩手前で切り抜けられたのは、主人公のサヴァイヴァル劇に詩情が漂っているからだ。そう、ニーソンの起用が効いてくる。

 ここでのニーソンは人間爆弾ではない。唯の生身の人間だ。動物スナイパーだったゆえ、オオカミに関する知識は持っているものの、基本的にそこいらのオッチャンと同じ存在だ。しかも、過去に妻との関係で何かがあったことが仄めかされる。ニーソンはオッチャンの苦悩に陰影をつける。大地に立ち向かうその姿は、その心の旅に通じている。この世を見限ったはずのオッチャンが、生への執着を見せる様に、矛盾にも似た命の難しさが表れ始める。

 それにしても雪原描写が凄まじい。通常でも零下20度。吹雪けばもっと下がることだろう。その過酷さが迫力と現実味たっぷりに演出されている。役者たちも本当にその場に放り出されているように見える。それに比べるとオオカミの描写は微笑ましい。遠目で見たなら本物らしいものの、アップで捉えると作り物感が気になる。「トワイライト」(08年)シリーズから抜け出てきたオオカミではないかと邪推する。

 途中ニーソンは、詩を読む。「もう一度闘って、最強の敵を倒すことができたなら、その日死んでも悔いはない」。後々効いてくるこの意味に、作り手のハードな志を見る。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ