ランパート 汚れた刑事

ランパート 汚れた刑事 “Rampart”

監督:オーレン・ムーヴァーマン

出演:ウッディ・ハレルソン、ベン・フォスター、ネッド・ビーティ、
   アン・ヘッシュ、アイス・キューブ、シンシア・ニクソン、
   シガーニー・ウィーヴァー、ロバート・ウィズダム、
   ロビン・ライト、スティーヴ・ブシェーミ、ジョン・フォスター

評価:★★★




 ウッディ・ハレルソンはいかにも悪人面だ。少し寄り気味の鋭い目。般若を思わせる口元と顎。ダイナミックに禿げ上がった頭。デンジャラスな匂いが至る所から滲み出ている。そんな彼が悪徳警官を演じると言っても、全然衝撃的ではない。むしろ「タイプキャスト」という言葉が浮かび上がる。それなのに。

 それなのに『ランパート 汚れた刑事』のハレルソンは、結局衝撃的だ。1999年ロサンゼルス、暴力的で人種差別的。エゴイスティックな部分を隠そうともせず、同僚にも辛く当たる。ニックネームは「デイヴ・レイプ」。映画はこの腐敗の色を強く押し出す警官の物語を紡ぐのではなく、その日常を観察する。自然光を活かし、空気のようになったカメラが、男の背後に密着する。ドキュメンタリーのような、リアリティTVのような生々しさが、ドラマティックな物語よりもよっぽど迫力を醸し出す。

 非人間的な言動の男が市民を守る側である警察にいて、しかもそれでも巧いバランスを保って生存しているのが面白い。必要悪と呼ぶには小粒な存在なのにも関わらず、彼は不思議と奔放なままだ。家庭では別れた二人の妻と暮らし、その子どもも一緒。愛人との情事にも積極的だ。

 その彼の「平穏」が崩れるきっかけになるのが、VIDEO映像というのが今日的。過剰な暴力が収められた映像が大々的に世間に知られることになる。どこにカメラがあるのか分からない世の中、警棒で黒人を滅多打ちにする画は、他のどんな証言よりも力を持つ。そして一旦崩れ始めた小さな王国は、その崩壊を食い止める術を失う。

 悪徳警官が真の姿を暴かれて堕ちていくというのは、映画のプロットとしてよくある。それなのに目が離せなくなるのは、男の言動の底にある愛国心は揺るぎないものであることを見せられるからだ(ただし、ここはもっと強調して良い)。言わば彼は、アメリカの細胞の一部だ。明るい正義心と隣り合わせの暗部が、人種の多様化と共に幅広くなった価値観と呼応する。

 アメリカの象徴としての警官をハレルソンは、詩情を漂わせながら演じている。常に怒りを感じさせる「動」のキャラクターはいない。静かな口調で対象物ににじり寄りながら、いつしか自分の世界に巻き込むことで、生き残りを図る。車を運転する際のハレルソンの横顔が何度も挿入される。アメリカの狂気がちらつく。

 メディアや調査機関、そして家族に追い詰められた警官は、次第にむしけらの様相を呈する。心の弱さも見えてくる。しかし、ここが面白いのだけど、それでもなお彼はしぶとい。絶体絶命的な状況下、自らも腹を括るというのに、それでもゴキブリ的生命力で生き延びる。ハレルソンの生気が説得力を与える。アメリカは簡単には死なない。警官の観察記がいつしかアメリカの観察記に変貌を遂げている。





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