それでも、愛してる

それでも、愛してる “The Beaver”

監督・出演:ジョディ・フォスター

出演:メル・ギブソン、アントン・イェルチン、ジェニファー・ローレンス、
   ライリー・トーマス・スチュワート、チェリー・ジョーンズ、
   ザッカリー・ブース、ジェフ・コーベット、ベイレン・トーマス

評価:★★




 監督ジョディ・フォスターは「リトルマン・テイト」(91年)「ホーム・フォー・ザ・ホリデイ」(95年)と「家族」を切り取ってきた。そこには「普通」とは少しだけ距離を置いたその肖像が刻まれていた。『それでも、愛してる』に出てくる家族も「普通」とは言い難い。心がバラバラになっている。原因は父親がうつ病にかかってしまったからだ。

 父親の状況は深刻だ。自殺を試みるところにまで追い詰められている。啓発本も薬も効かない。家からも追い出される。ところが、彼は意外な方法で事態を好転させる。捨てられていたビーヴァー人形を左手に装着し、ビーヴァーに人格を持たせ、本音をズバズバ言わせることで心の平穏を掴み取る。オッサンが人形と会話する画が奇妙な空気を創り出す。フォスターがこの物語の中で唯一見せるユーモアはここだ。

 隠しておきたい自分の一部をビーヴァー人形と一緒に切り離すことでバランスを取るというのは、医学的に見てどうこうというのは分からない。それに、実際にあり得ることなのかどうかは重要ではない。問題にすべきはビーヴァーと会話することで見えてくると思われたうつの核心が、もっと言うなら父親の人物像がちっとも見えてこない点だ。

 そう、父親がこれまでどんな道を辿ってきたのかが見えない。どうやら家族関係に問題があることは察せられるものの、その詳細はギクシャクした掛け合いを見せることに終始、会社を遺した父との関係もまるで言い訳のように語られるのみだ。唯一突っ込んだ高校生の長男との複雑な距離感も、「似ているふたり」以上の表情が見えない。

 ビーヴァーとの奇妙な生活の先に見えてくるものが孤独と、「それでも、一人ではない」という教えというのが甘ったるいのではないか。終幕は父親の人格がビーヴァーに乗っ取られそうになるところにまで踏み込んでいく。ホラー的な匂いも漂い始める。それとはまるで溶け合わないちぐはぐさが大いに気になる。

 父親にメル・ギブソンが起用されているのは落ち着かない気分にさせる。最近のギブソンは若い頃の軽妙さが消え、瞳の奥にどす黒いものを感じさせる。フォスターはその彼から懸命に軽やかなリズムを捻り出しているものの、画面の重たさは一向に消えない。ただし、終幕のダークな流れにはギブソンの狂気が活かされている。遂にビーヴァーと対決する件は、やけに生々しく感じられた。





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