トータル・リコール

トータル・リコール “Total Recall”

監督:レン・ワイズマン

出演:コリン・ファレル、ケイト・ベッキンセール、ジェシカ・ビール、
   ブライアン・クランストン、ジョン・チョウ、ビル・ナイ、
   ボキーム・ムッドバイン、ウィル・ユン・リー

評価:★★




 同じフィリップ・K・ディックの短編小説をベースにしているからと言って、1990年の同名映画との比較に固執するのは賢明ではないだろう。90年版はディック映画であるより前に、アクの強いポール・ヴァーホーヴェン映画であり、筋肉任せのアーノルド・シュワルツェネッガー映画であるからだ。ここはひとつ、原作が同じであることは忘れて、新たなる『トータル・リコール』にまっさらな気持ちで挑もうではないか。

 作り手にヴィジュアルセンスがないことは早々に判明する。突然始まる銃撃戦と逃走劇。コリン・ファレルがいきなり窮地に立たされている。絶体絶命、女を逃がすことを第一に考え自分が犠牲になる際、ファレルが身体を縛られるときの投げ縄風近未来ロープの光具合が実に安っぽいのだ。「たったそれだけ」ではない。「たったこれだけ」で分かってしまうところが、SFの怖さだ。貧困層が住む世界の街並のごちゃごちゃした感じも、ネオンのケバケバしさも、出てくるメカやガンの平凡さも、裕福地区と貧困地区を結ぶフォールと呼ばれる輸送エレヴェーターの創り込み不足も、いかにも想像力と創造力に乏しい。ほとんど唯一感心したのは、手の平に埋め込まれた携帯電話ぐらいか。しっかりスマートフォン風!

 手掛けたのはレン・ワイズマン。クセなく物語に入り込めるとして無理矢理褒めるよりも先に思うのは、映画自体がのっぺらぼうな無個性になってしまった不運だ。「アンダーワールド」(03年)とほとんど同じノリで、独創的世界に乗り込み、見事自分を見失っている。

 ただし、それゆえ、SF映画の血や肉が分かりやすく見えてくるのは面白いところかもしれない。「ブレードランナー」(82年)「スター・ウォーズ」(77年)「マトリックス」(99年)「フィフス・エレメント」(97年)「マイノリティ・リポート」(02年)「TIME タイム」(11年)といった新旧・傑作駄作入り乱れながら、その影響がくっきり浮上している。画面がテレビゲーム的に処理されているのは恥ずかしいものの、その単純な見せ方により、かつてのSF映画のエキスが血となり肉となり、今の映画に通じていることが気楽に伝わる。アイデアの枯渇だと批判するよりも、確かな継承だと歓迎するべき…のような気がする。

 ワイズマンが(大好き、としか思えない)妻ケイト・ベッキンセールを悪役に当てたのは大きなミスだ。「アンダーワールド」を見れば分かるように、この女優には肉体的な迫力がない。どれだけ執拗に鬼の形相で主人公を追い詰めても、薄っぺらな身体がサスペンスを削ぐ。もうひとりのヒロイン、ジェシカ・ビールの体躯の良さと比較すると、そのパワー不足は明らかだ。尤も、ビールの方はベッキンセールほどに脆さは感じさせず、これはこれで物足りない。難しいものだ。可もなく不可もなくのアクションで話と一緒に転がっていくファレルとも、ふたりはお似合いとは言えない。

 ディックが用意した世界は複雑に入り組んでいる。重要なのはその複雑さが知性に直結していないということで、それに気づいて見せ方を工夫しなければ勝算は薄い。頭でっかちで息苦しいだけの映画になる危険がある。この映画はその罠にまんまとハマる。闇雲にカメラを動かし、記憶の塗り替えが可能な世界観の説明と物語のスピーディな進行に終始、この世界の重心から放たれる妖しく猟奇じみた磁力に気づかない。間違った記憶を植えつけられる主人公よりも、よっぽど気の毒な事態だ。





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