ペイド・バック

ペイド・バック “The Debt”

監督:ジョン・マッデン

出演:ヘレン・ミレン、ジェシカ・チャステイン、
   サム・ワーシントン、マートン・ソーカス、シアラン・ハインズ、
   トム・ウィルキンソン、イェスパー・クリステンセン

評価:★★★




 CIAやMI5は映画でも頻繁に目にするけれど、イスラエルの秘密諜報機関モサドはあまり見かけない。情報収集や対テロリズム対策、ナチス戦犯の捜索を行う。『ペイド・バック』はその中でも、あるナチス戦犯の捜索に焦点を当てた物語。

 …と言っても、モサドのプロフェッショナルな活動を讃えるような作りにはなっていない。イスラエルで大いに歓迎された作戦の裏に隠された真実を暴き出す。そこには自分の保身を考える者たちの浅はかな秘密が潜んでいる。難しい任務。信念や責任。真実の重みと嘘の重み。時間の流れ。次々浮かび上がる言葉の数々が辿り着く先に見えてくるのは、代償と呼ばれるものだ。

 モサドの若いメンバーたちに与えられた任務は1965年、東ベルリンで産婦人科医として暮らす元ナチスの専属医を捕らえるというもの。前半の見せ場は作戦の細部にある。夫婦を偽っての外出。患者であることを偽装した潜入操作。ネックレスに仕込まれた小型カメラ。バス内での情報の受け渡し。肉体を駆使した格闘(特にヒロインによる首を絞める足技に注目)。ベルリンの壁の突破。救急車の偽装。全ての作戦が念入りには見えないものの、スピーディに済まされていくのでさほど気にならない。

 作戦の隠し味として投入されるのは、モサドメンバーである男二人、女一人によるメロドラマだ。所謂三角関係ができあがることで、作戦の土台が揺れ始める。本来この手の作法はメインとなる話の足を引っ張るものだけれど、ここでは緊張感を創り出す素材としてしっかり機能している。三角関係と言っても、彼らは何を第一に考えるべきか、決して忘れないからだ。

 ただ、時を流れて描かれる結末は、少々娯楽的にまとめ過ぎたかもしれない。作戦から30年後、遂に払うことになった代償が、娯楽の媚薬によってある種のカタルシスを伴いながら描かれる。それまで人物に重心が置かれた展開だったのが、突如物語性を帯び始め、劇的な結末に向かって走り出す。唐突で安っぽい匂いがちらつく。

 中心となる三人の若き日と現在(1997年)を、新旧スターたちが二人一役で演じている。ヒロインの若き日をジェシカ・チャステイン、現在をヘレン・ミレンが演じるというのは見事なキャスティング。どちらも凛としていてカッコイイ。特にミレンは横顔の美しさが印象的だ。男たちは明暗が分かれた。マートン・ソーカス&トム・ウィルキンソン組はまずまず、しかしサム・ワーシントン&シアラン・ハインズ組はどうか。顔の作りも漂わせるムードも丸っきり異なる。意外な面白さを見せるのは元戦犯役のイェスパー・クリステンセンだ。言葉を巧みに操り若いメンバーの心をかき乱していく感じが良く出ている。ハンニバル・レクターほどの狂気はない。ただ、もっとそれに近い線を狙ってもユニークな味が出ただろう。





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