ぼくたちのムッシュ・ラザール

ぼくたちのムッシュ・ラザール “Monsieur Lazhar”

監督:フィリップ・ファラルドー

出演:フェラグ、ソフィー・ネリッセ、エミリアン・ネロン、
   ブリジット・プパール、ダニエル・プルール、
   ルイ・シャンパーニュ、ジュール・フィリップ

評価:★★★




 冬のカナダ、モントリオール、ある小学校の教室で担任の先生が首吊り自殺しているところが発見されるというショッキングな場面から始まる。しかも、最初に見つけたのは生徒だ。別の生徒も吊られている身体を目にしてしまう。断わるまでもなく、その衝撃が波となって立ち上がる。教師たち、親たち、そしてもちろん生徒たちの心の海の平穏が乱される。『ぼくたちのムッシュ・ラザール』は波の行方を丁寧に追う。

 …と言ってもこの映画、学校や生徒がこれをどう乗り越えたのか、感動ストーリーとして描くことには興味がない。強引に感動を捻り出すことも、優しく同情をちらつかせることも、大袈裟な説教を掲げることもない。代わりに、学校という特殊な空間の実体を立体的に見せていく。

 学校を特殊な空間たらしめているものは、その大半が子どもにより成り立っている点にある。自分の子ども時代を思い起こせば明らかなように、子どもの視界は狭い。奥行き深くない。自分を愛してくれる親のいる家庭と、そして毎日通う学校の中だけで、生活が完結してしまう。大人になれば世界は広がる。しかし、小さな身体には学校がとても巨大なものとして映る。その外にはまた別の可能性が広がっていることに気づかない。ゆえに担任を失うという悲劇から生まれた感情は、狭い中で行き場をなくす。

 新しく迎えられた教師には何ができるだろう。特に何もさせないところがミソだ。バシール・ラザールという名のアルジェリア出身教師。どうやら過去に何かがあったらしい。この学校で彼は、異分子的側面が強い。死んだ教師を知らぬ唯一の存在と言って良い。生徒たちはムッシュ・ラザールが先生という感じがしないだろう。

 するとそこには、無防備な空気が広がる。傷を負った魂の輪郭が露になる。変に利発で行儀の良い態度。止められない小さな暴力。埋められない喪失感。ここでは寄り添い合うことしかできない。でも、それに救いがある。

 「死」という概念が理解できる年齢になったばかりの命が溢れる学校に、教育現場の問題や国が抱える難民問題、単純には型に嵌められない人間関係が浮上する。傷つきやすくて、脆くて、頼りない命。そこに仄かな希望と未来が見えるのが美しい。理屈を切り離したところにある何かが、優しい光に包まれる。最後に映し出されるショットに見える光がもっと広がっていけば良いのに。子どもたちの瑞々しく、生き生きした表情がそれを信じさせてくれる。





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