ローマ法王の休日

ローマ法王の休日 “Habemus Papam”

監督:ナンニ・モレッティ

出演:ミシェル・ピッコリ、イエルジー・スチュエル、レナート・スカルパ、
   マルゲリータ・ブイ、フランコ・グラツィオージ、カミーロ・ミッリ、
   ダリオ・カンタレッリ、ロベルト・ノービレ、ジャンルカ・ゴビ

評価:★★




 これはかなり意表を突く結末ではなかろうか。新ローマ法王が「自分の場所」に戻り、気持ち良く話がまとまると想像する人が大半なのではないか。それをシラッと裏切るまとめ方と言うか、放り出し方と言うか。まあ、ナンニ・モレッティが監督なのだから、そう驚くことでもないのか。

 『ローマ法王の休日』はそもそも、邦題から連想されるような、ほのぼのムードの映画ではない。一人の男が思いがけない出来事に直面し、自分という存在と向き合うことを強いられる。浮上するのは、弱さ。人を指導する立場でありながら男はしかし、己の弱さをなかなか受け入れられない。それが逃亡という形になって表れる。

 邦題は内容に合っていないものの、そうつけたくなる気持ちは分からないではない。話の舞台はなんとカトリック教会の頂点ヴァチカン。コンクラーベ(法王選挙)で選ばれてしまったダークホースが、プレッシャーから我をなくし、町へと飛び出していく。現実味はない。ハリウッド映画ならファンタジーとして見せるところだろう。言うまでもなく、モレッティはハリウッド式を避ける。いつもように登場人物に親密に寄り添うことを選ぶ。

 モレッティの選択が成功したかと言うと、首を傾げざるを得ない。モレッティは真摯な態度を貫いているけれど、それにより見えてくる新法王の葛藤よりも、設定の大胆さとそれでも個人的な視線を維持するモレッティの作法のせめぎ合いの方が前面に出ている。モレッティ映画の箱に落とし込むには不釣り合いなスケールの題材なのではないかという疑問に支配されている。

 笑いは新法王の逃亡の間中暇を持て余す、他の枢機卿たちの姿に寄り掛かっている。自分でなくて良かったと安心しながら他愛ない雑談を交わし、カードゲームに興じ、バレーボールで汗を流す。モレッティ自身が演じる精神科医も加わって、ヴァチカンはちょっとした遠足だ。白髪のジイサマたちばかりだから、画が妙に強力。しかし、新法王は神妙な顔つきで右往左往。描き方も実にあっさり。もちろん狙い通りだ。

 ここにはモレッティのヴァチカンの権力への冷めた考えが横たわっていると思われる。人の弱さに笑みを浮かべながら、その気持ちを深く支えようとしない権力主義に辛辣な眼差しを向ける。ただ、風刺と呼ぶには頼りなく、批判と呼ぶには教会との距離が中途半端だ。やはり題材と演出のミスマッチを乗り越えられなかった印象が強い。

 ヴァチカンの儀式、美術装置、衣装等は面白い。コンクラーベの進め方も珍しい。「天使と悪魔」(09年)よりも断然興味深い。いちいち大袈裟な様式美に貫かれている。その積み重ねが重圧に形を変える。ミシェル・ピッコリが泣き言に塗れるのも無理はない。





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