リンカーン弁護士

リンカーン弁護士 “The Lincoln Lawyer”

監督:ブラッド・ファーマン

出演:マシュー・マコノヒー、マリサ・トメイ、ライアン・フィリップ、
   ジョシュ・ルーカス、ジョン・レグイザモ、マイケル・ペーニャ、
   フランシス・フィッシャー、ボブ・ガントン、ブライアン・クランストン、
   ウィリアム・H・メイシー、キャサリン・メーニッヒ、マイケル・パレ

出演:★★★




 『リンカーン弁護士』なんて言うから、アメリカ大統領を連想してしまうものの、ここにおけるリンカーンとはフォード製造による高級車のことだ。まあ、車名が大統領から取られているので、あながち連想も間違いではない。主人公弁護士ミック・ハラーはリンカーンに乗っている。それだけではない。リンカーンをオフィスとして活用している。思わず身を乗り出す設定だ。なぜ彼は車を事務所代わりにするのか。弁護士としての利用価値はどこにあるのか。この車がどんな走りを見せるのか。ところがこのリンカーン、車体を黒光りさせるばかりでちっとも活躍しないのだ。アクション場面に出てくることすらない。

 勿体無い。なぜならハラーの描き込みは悪くないからだ。ハラーは依頼人の求刑をできるだけ軽くするべく大金を利用、達者な言葉でわざと罪を認めさせることもある。要するに真正直な「正義」とは縁遠い人物だ。依頼人が得られる最大の利益を目指して、臨機応変に対処する。そのためには多少道を踏み外しても気にしない。小ずるい性分を隠すことなく、彼はいつも笑顔だ。人物描写に不安があるとするなら、演じるのがマシュー・マコノヒーという点だろう。

 ところがどっこい、マコノヒーが意外なほど善戦している。「素っ裸でボンゴ」事件前後から濃厚になってきた軽い男のイメージを逆利用するしたたかさを見せている上、年齢を重ねたことで露になってきた日々の疲れや容貌の衰えが、役柄に奥行きを与えている。言動には重みはなくとも、その人生は決して平坦なものではなかっただろうと思わせる。

 しかも傍らには、マリサ・トメイを置いている。トメイが演じるのはハラーの元妻だ。娘もいる。彼女たちとの関係が良好で、しかもトメイが「イイオンナ」の空気を柔らかく魅力的に発散しているので、この女が信頼するのであれば、ハラーもどこかで一本筋が通った男なのだろうと納得できる。

 ハラーが担当する事件は、一見単純だ。不動産会社を経営する資産家の青年が起こしたレイプ事件。「本当に彼がレイプしたのか」という謎で序盤を引っ張った後、ハラーが過去に担当した事件が絡んだ別の表情が見えてくる。弁護士は依頼人の不利益になる証拠を開示してはいけないという秘匿特権が大いに効いてくる。ハラーは青年の残酷な本性を確信しながら、秘匿特権のために思うように動けない。それどころか自分も殺人犯に仕立て上げられそうになる。青年役のライアン・フィリップがふてぶてしくも可笑しい。

 中盤から終幕にかけての裁判劇を中心に置いた件は、実はあまり上手く機能していない。弁護側と検察側が真っ向勝負する裁判劇の醍醐味は、細部の綻びによりさほど浮上しない。ただし、ここが賢いのだけれど、作り手は裁判劇に執拗にこだわることをしなかった。裁判は物語の流れの一部ではあっても核には置かなかった。作り手が選んだのはコンゲーム映画としての側面で、狙い的中、そちらで物語にスピードをつけることに成功している。

 したがってここには、弁護士が抱える悩ましさ、倫理観を揺るがせる仕事の難しさ等を考えさせる場面は出てこない。観る側は弁護士に思い切り肩入れし、この絶体絶命の窮地をどう逆転するのだろうとハラハラしていれば良い。その潔さが命。つまみを堪能しながら、ハラーと一緒に酒でも呑んでいる気分だ。





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