だれもがクジラを愛してる。

だれもがクジラを愛してる。 “Big Miracle”

監督:ケン・クワピス

出演:ドリュー・バリモア、ジョン・クラシンスキー、クリステン・ベル、
   ダーモット・マルロニー、ヴィネッサ・ショウ、ジョン・ピンガヤック、
   アマウォーク・スウィーニー、テッド・ダンソン、ジェームズ・レグロス

評価:★★★




 1988年代アラスカ、バローという町で実際に起こった、クジラ救出作戦をベースにしている。…と聞くと、途端に警戒してしまうのも無理はない。人情を無理矢理押しつけ、善意を武器に難関を突破する、破廉恥な映画なのではないか。ベタベタした人間関係を崇め、それに寄り掛かった、しかしその正体は厚かましいだけの映画なのではないか。『だれもがクジラを愛してる。』はしかし、それを笑いながら吹き飛ばす。意外だ。ホント、意外だ。

 出てくるのは打算的な人間ばかりだ。彼らはクジラを助けるより先に、この機会を利用して、今の自分の置かれている状況を打破しようと極寒の地に乗り込んでくる。実績に乏しい青年ディレクター兼レポーター。野心家の女レポーター。クジラを食料としているイヌピアック族。「良い人」をアピールしたい知事。地元の理解が欲しい石油発掘業者。商品を売り込みたい零細企業。仕方なく任務を負う州兵。遂には選挙を意識したホワイトハウスが、さらには国境を越えてソ連まで出てくる。いずれもが、クジラと一緒に起死回生を狙う。

 ケン・クワピス監督は打算の塊のような彼らを滑稽に見ているところがある。目の前で苦しんでいるクジラよりも己の身を助けたい。彼らを批判はしない。しかし、その言動を冷めた目で眺めている。環境保護団体グリーンピースのメンバーも例外ではない。もちろん彼女はクジラを助けたい。最大の優先事項だ。しかし、その目には狂気スレスレのものが宿っている。伝統や文化、経済や政治を無視して猪突猛進。怖い。

 打算が畳み掛けられる。それぞれ向いている方向が違う。その彼らがいつしかひとつになる。クワピスはここで「命」のカードを切る。バラバラになった思いの接着剤として前面に押し出す。苦しみもがく命に関わることで、彼らの中に何かが生まれる。これがギリギリのところで胡散臭くならなかったのは、前述のように、登場人物を少し離れたところから見られたからだろう。

 断わるまでもなく、分厚い氷の下に閉じ込められた三頭のクジラの救出作戦が見せ場になっている。氷の穴を大きくするぐらしいかできることはないように思えるものの、人間は知恵を持った生き物、あの手この手でクジラに手を差し伸べる。極寒の地ならではのピンチが、ちゃっかりサスペンス作りに利用されているのも見逃せない。

 あまりに寒くて機械が役に立たなくなる件には緊張する。発電機も凍ってしまう気温。そこでチームは、予め発電機を起動させた状態で、それをヘリコプターに乗せることにする。この際、煙が発生するため、ヘリのドアは開けっ放しだ。それで無事に飛ぶのかとハラハラした直後、今度はヘリの中が寒過ぎて、パイロットの瞼が閉じてしまう。これを切り抜ける方法には大笑い。

 アンサンブルは誰もが分をわきまえた、でしゃばらないもので好感が持てる。中でもファニーフェイスをキープするジョン・クラシンスキーにはニンマリ。あの大きな耳と鼻は、眺めているだけで良い気分だ。ほぼノーメイクということもあり、多少老けて見えるドリュー・バリモアは、意外や時折ベティ・デイヴィスに見える瞬間があってびっくり。デイヴィスとは似ても似つかぬ資質のバリモアだけれど、デイヴィス路線を追求したら意表を突いた面白さが出てくるかもしれない。





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