崖っぷちの男

崖っぷちの男 “Man on a Ledge”

監督:アスガー・レス

出演:サム・ワーシントン、エリザベス・バンクス、ジェイミー・ベル、
   アンソニー・マッキー、エド・ハリス、エドワード・バーンズ、
   タイタス・ウェリヴァー、ジェネシス・ロドリゲス、
   ウィリアム・サドラー、カイラ・セジウィック

評価:★★★




 はっきり言ってしまうと、主人公の計画には穴がある。偶然に左右されている展開が目立つ。下準備の周到さは不自然だ。結局身体を張る方向に走るのも腑に落ちない。主人公が計画を遂行できるかどうかが物語の軸に置かれていることを考えると、計画の乱れは致命傷ではないか。ところが、『崖っぷちの男』はまさに崖っぷちで踏み止まる。ご都合主義を豪快と言い包める。気の抜けたところを愛嬌として見せる。

 ニューヨーク、ルーズヴェルト・ホテルの21階の窓から男が飛び降りようとしているのが見える。アッという間にビルの下は野次馬の人だかり。マスコミは生中継を開始。自殺を思い止まらせようと交渉人を含めた警官が終結する。衆人環視の中、男はしかし、すぐには飛び降りない。どうやら何かを企んでいるようだ。男が交渉人の女刑事と対峙するあたりは「交渉人」(98年)を思わせるし、ビルの窓の縁からほとんど動けない状況下は昨今量産されているワンシチュエーションスリラーの趣が大だ。ただ、最も強く心に思い起こしたのはロン・ハワード監督、メル・ギブソン主演の「身代金」(96年)だ。

 というのも、男の思い切った計画のエンジンとして置かれているのが、大衆心理だからだ。「身代金」では息子の身代金を要求された主人公が、メディアを使って逆に犯人に巨額の懸賞金を賭ける大勝負に出る。国民の目が犯人を追いつめる。『崖っぷちの男』では男が死を演出することで自分に注目を集中させ、すぐ近くの別の場所でとある計画を実行に移していく。言わば、はったりのスケールがデタラメで、同時に太く頑丈なのだ。序盤ではある爆発が起こる。しかし、誰もそれに気づかない。大衆の悲鳴に爆発音がかき消されたからだ。無理があるだろう。しかし、それをシラッと得意気に見せる。観客は愉快なはったりに、かえって乗ってやろうという気分になる。

 サム・ワーシントンが演じる主人公の目的がなかなか明かされないのが有効に働いている。開巻直後に刑務所に入っていることが明かされる主人公が、なぜ高層ホテルの窓の縁に立たなければならないのか。その謎でぐいぐい引っ張りながら、計画の全体像を完成させていく。そのために過去と現在を行き来する見せ方が滑らかだ。パズルを解き明かすような興奮は、ホテルのすぐ傍、左前方に見えるビルでもある作戦が実行に移されていくことで、何倍にも高まっていく。どうやらダイヤモンド王が関係していることが仄めかされる。主人公の刑務所送りの理由も関係しているに違いない。

 計画の全体が見えてくる過程で、登場人物それぞれの表情が変化していく。交渉人の刑事とは妙な連帯感が生まれていく。冷たい同僚に見えた男の交渉人がプロ意識を見せる。仲が悪いと思われた主人公の弟が兄のために人生を賭ける。かつての同僚は不穏な動きを見せる。表情の変化はどんでん返しを畳み掛ける種になる。

 とりわけ弟とその恋人の活躍は、絶体絶命の主人公の状況と並ぶ見せ場になっている。「ミッション・インポッシブル」(96年)風の緊迫感ある活劇。ちゃらちゃらした男としっかり者の女の組み合わせが生み出すユーモアも良い味だ。防犯カメラに写らないよう、床と同じ色・デザインの布を被って移動するという緩い技も許せてしまう。コントかよ!

 機動隊が突入してからは力技に逃げてしまった感がある。惜しいところだ。ただ、それまで動けなかったワーシントンがパワーを爆発させるのは悪くない。ビルからの大ジャンプなど、思い切り漫画だけれど、この時点ですっかり気分は寛容になっているので気にならない。それにワーシントンはパワー勝負が似合う。最後の背負い投げで爽快さがグッと増す。





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