少年は残酷な弓を射る

少年は残酷な弓を射る “We Need to Talk About Kevin”

監督:リン・ラムジー

出演:ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、
   エズラ・ミラー、ジャスパー・ニューウェル、
   ロック・ドゥアー、アシュリー・ガーラシモヴィッチ、
   シオバン・ファロン・ホーガン、アースラ・パーカー

評価:★★★




 映画で母と子どもの関係が描かれるときは、ハートフルにまとめられるのが常だ。何があっても母と子の間には揺るがない絆があるとする。確かにそれに救われることは多々ある。ただ、母が子を思う気持ち、子が母を思う気持ちを絶対的なものとして置くのは安易であると同時に、危険でもあるだろう。『少年は残酷な弓を見る』はそこのところを鋭利に突く。

 リン・ラムジーが選んだのはホラーとして撮るという作法だ。お腹を痛めて産んだ我が子。母は当然、惜しみない愛を注ぐも、息子はそれに逆らうような問題行動を連発する。愛らしい顔の裏側には、母への憎しみとしか取れない何かを感じさせる。ラムジーは幾度となく息子の憎しみと母の愛情を衝突させる。それにより生じる亀裂が恐怖に直結していく。じわじわと薄ら寒く、不快で息苦しく、怖ろしい。

 周到にイメージが創り上げられていく。絵画のような構図と優れた色彩感覚の画面で強く心に残るのは、赤のイメージだ。血を連想させる赤から、母は決して逃れられない。トマト、ペンキ、ドア、椅子、ライト、ネオン、ボール、ぬいぐるみ、ジャム、缶詰…。赤は憎しみの炎にも罪の傷跡にも、深い愛情にも底の見えない恐れにも変態する。赤が出現する度、緊張が走る。

 もうひとつ、「潰れる」ショットも気になる。トマトが、ジャムが、果物が、シリアルが意図的に押し潰される。これはもちろん抑圧の象徴なのだろう。悪意や怒りに容赦なく囲まれて、母は窒息寸前だ。

 惜しむらくは、こうした細部の創り込みが物語の奥行に繋がらなかったところか。母と息子の間に起こった出来事を画により説明することに懸命になり、話のパズルは案外簡単に紐解かれる。息子の憎しみの正体をさらに怪物的に広げていく仕掛けが弱い。

 また、ホラーはホラーでもオカルト方面にずり落ちるのはいただけないところ。昔から悪魔の子が大人を苦しめる映画は後を絶たない。その穴にハマり込んだ嫌いがなくはない。穴に落ちたところでそこから這い上がる腰の強さも見せるものの、落ちる前に踏み止まるべきだった。

 いつも素晴らしいティルダ・スウィントンが母親役でゾッとさせる。いや、スウィントンは恐怖を覚える側には違いない。ただ、彼女の場合、息子から逃げることも可能なわけで、しかしそうしないところに、スウィントンの憔悴の表情が効いてくる。それこそ母性に恐怖を忍ばせる。断ち切れない苦しみや畏れをヒリヒリと魅せていくのだ。骸骨に皮が貼りついた様な、静の迫力よ。色素の薄い顔が、ポップなところが多い画面と強烈な対比を成している。





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