ザ・ガード 西部の相棒

ザ・ガード 西部の相棒 “The Guard”

監督:ジョン・マイケル・マクドノー

出演:ブレンダン・グリーソン、ドン・チードル、リアム・カニンガム、
   マーク・ストロング、デヴィッド・ウィルモット、
   ロリー・キーナン、フィオヌラ・フラナガン

評価:★★★




 スポーツカーが道をハイスピードで駆け抜けるところから始まる。美しいフォルムを舐めるように撮る。空撮を取り入れ、カットを短く畳み掛け、バックにはヒップホップミュージックをガンガン鳴らす。MUSIC VIDEOと勘違いしてしまいそうにご機嫌。なるほどいかにもバディムービーらしい画かもしれない。…と思わされたのも束の間、次のショットでは横転した車と、そこから投げ出された若者が見える。傍らにはそれを退屈そうに眺める初老の制服警官(ガード)。寂しい風景もため息をついているみたいだ。『ザ・ガード 西部の相棒』は案の定、ハリウッド製バディムービーとは違う。オープニングでそれを宣言する。

 なぜならこれはアイルランド映画だ。舞台はアイルランド西部の海辺の田舎だ。地元の刑事とアメリカからやってきたFBI捜査官がコンビを組み、麻薬密輸事件を調査するという軸となる物語こそ、ありふれたハリウッド仕様だけれど、その装飾にはアイルランドの魂が見える。いや、魂なんて大袈裟なものではないか。アイルランド人が飲んだくれながら、でも自分のアイデンティティーは守ってやるぜ、とささやかな気概を見せる。バカだけど、なんだか可愛らしい。

 アイルランドらしく曇天に覆われている。そしてそれを基調にした画面作りになっている。決して陽気な風景ではないものの、それを逆手に取った目に焼きつく画が多い。時折ハッとするような色遣いが顔を出すのも、だからこそ面白い。主人公の部屋の緑の壁紙と黄色い毛布。青い制服にストライプの靴下。黄緑の芝生とその上に散らばった黄色い落ち葉。ライティングもさり気なく凝っている。

 しかし、何と言っても強力なのは主人公の造形だ。オープニングの佇まいを見れば、品行方正でないことは明らかだけれど、いつまで経っても人物像が掴めないのがポイントだ。輪郭がぼやけているのではない。わざと選んでいる。正義漢なのか、悪事を何とも思っていないのか。口から出る言葉は本当なのか、嘘だらけなのか。ただの女好きなのか、何か特別な考えがあるのか。実は哲学的感性の持ち主なのか、口が悪いだけなのか。でたらめな態度に苦言を呈されたときの言い草が良い。「適切を求めるならアメリカへ行け」。

 ブレンダン・グリーソンが演じることで、主人公がますます捉え所がなくなる。仏頂面で闊歩しながら、しかし着実に真相に近づいていくグリーソンが可笑しい。要領を得ない、的を射ない話しぶりなのに、のらりくらりと核心には接近している。面倒臭い男には違いなくても、身体はジイサンに近づいていても、どこかにエネルギーを秘めている。アクションは当然カッコ良くはキマらないけれど、どういうわけだかちゃんと魅せてしまう。もちろんFBI捜査官役のドン・チードルは、グリーソンを気持ち良く泳がせる。

 脚本が冴えているのだろう。ストーリーをだらだら追いかけているように見せかけながら、場面ごとに速度が増していく。毒気たっぷりのユーモアは刺激がたっぷり。股間に銃を隠す少年、明るい売春婦、寒中水泳…といった何気ない描写に隠された伏線。シャープさを演出する大胆な省略。…かと思えば、聖書をくわえた死体と壁の血文字を始め、ただのフザけもふんだんに盛り込まれる。

 クライマックスになってもグリーソンとチードルのコンビネーションは良いんだか悪いんだかはっきりしない。でもそれが良い。バディムービーの定石に蹴りを入れるのを目指すところから始まった映画かもしれない。





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