グレイテスト

グレイテスト “The Greatest”

監督:シャナ・フェステ

出演:ピアース・ブロスナン、スーザン・サランドン、キャリー・マリガン、
   アーロン・ジョンソン、ジョニー・シモンズ、マイケル・シャノン、
   ジェニファー・イーリー、ゾーイ・クラヴィッツ

評価:★★




 愛する人を交通事故で失った人々の物語がまたまた登場。これ以上ない、突然の悲劇が故人を愛していた者の心を打ち砕く。心がバラバラになり、続いてこれまで築き上げてきた家族関係・人間関係がバラバラになる。負の連鎖はどこまで続くのだろう。『グレイテスト』はその行く末を、生真面目に見つめていく。これだけ何度も語られてきた題材だ。それをどう受け止めるのかは十人十色。確かに描き方には工夫の余地があるのかもしれない。

 ところが、ここにはどこかで観たような光景、簡単に想像できる風景しか見当たらない。ある家族の上の息子が死ぬ。父親は気丈に振る舞っているように見えて、哀しみを吐き出せなくて苦しんでいる。母親は死を受け止めきれず、異常行動が増えていく。弟はやめていたはずのドラッグに再び手を染める。タイトルクレジットが出るまでの間、葬儀を終えた家族がタクシーの中で無言でいるところが長々と映し出されるけれど、この場面の説明を丁寧に受けている印象だ。丁寧でもわざわざ語るほどのことでもない。映し出される哀しみを納得できても、感じ入るところは少ない。

 納得できないのは一家を尋ねてきたの息子の恋人への反応だ。彼女は妊娠していることを打ち明ける。父親は息子の名前を出すことを拒絶し、弟の態度は素っ気無い。母親は産んで欲しくないと言い放ち、露骨に冷たい言動に出る。いや、納得できないのは構わない。同じ価値観ではないのだろう。ただ、それならばどうしてそういう反応しかできないのかを見せて欲しい。人間としてどうなのかと思う行動を並べられるのは困る。自分こそが最も故人を愛していた。自分こそが最も哀しんでいる。自己憐憫に走った者たちの掛け合いが虚しい。

 それゆえ17分間の空白も大きな意味は持たない。事故から死ぬまでの17分間。故人はどんな会話をしていたのか。その謎がひとつのミステリーとして置かれているものの、普通に考える以上のものは出てこない。恋人を持つというのはどういうことかを考えたら、自ずと見えてくる。真相をきっかけに霧を晴らすのは安易というものだ。

 話としては酷く冷静な気分を誘う映画だけれど、キャリー・マリガンが出てくる場面は不謹慎なほどに楽しい。マリガンが演じるのは故人の恋人だ。少女性をたっぷり残したマリガンが、その表情により愛されていたことを優しく魅せていく。たいした言葉はなくても、その立ち振る舞いから、故人と本当に想い合っていたことが伝わる。ファッションも見もの。初めて家に訪ねてくるときは、青いキャミソールの上によもぎ色の水玉服を羽織る。特別奇抜なデザインではないものの、カラーコーディネートが可愛らしい。愉快なアイデア勝負。マリガンの淡い存在感とも合っている。わざわざ故人の家族の世話になりにくるという不可解さは都合良く忘れることにする。

 故人を演じるアーロン・ジョンソンとマリガンの回想場面も心に残る。若い魂同士が引き寄せられていくのが瑞々しく描写される。ジョンソンの鍛えられていない身体も現実感があるし、ショートヘアが愛らしいマリガンの小鹿のような動きには頬が緩む。ふたりが肉体的に結びついたのはほんの僅かの間だったかもしれない。けれど、想い合っていた時間は長い。それを納得させる空気が創り出されている。このふたりのラヴストーリーをメインとして観たいと思ってしまうほどに。





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