幸せへのキセキ

幸せへのキセキ “We Bought a Zoo”

監督:キャメロン・クロウ

出演:マット・デイモン、スカーレット・ヨハンソン、
   トーマス・ヘイデン・チャーチ、パトリック・フュジット、エル・ファニング、
   ジョン・マイケル・ヒギンズ、コリン・フォード、
   マギー・エリザベス・ジョーンズ、アンガス・マクファーデン、
   カーラ・ギャロ、J・B・スムーヴ

評価:★★★




 「ファミリー・ツリー」(11年)のジョージ・クルーニーに続き、『幸せへのキセキ』ではマット・デイモンが「オッサン」になる。若々しかった「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」(97年)から14年も経っているのだから、当然か。いやでも、近年目に見えて顔が精悍になってきていたではないか。その影を微塵も感じさせないこの「オッサン」ぶり、もっと評価するべきなのではないか。死んだ妻の思い出を引きずり、子どもと上手く向き合えない父親そのもの。何たる平凡さ。もちろん平凡を輝かせることほど難しいことはない。

 デイモンの「オッサン」ぶりはキャメロン・クロウが指揮を執っているのが大きいだろう。嫌いな言葉を使うなら、「等身大」をクロウほどヴィヴィッドに描く才能を持った人はいない。登場人物の傍らにそっと寄り添うようなクロウの演出は、創り上げられた彼らが自分たちと同じ人間であることを思い出させてくれる。画面に向かって声をかけたら、振り向いてくれそうな息遣いを感じさせる。クロウ映画を観ると大切なスナップ写真を眺めてる気分になる。登場人物との距離が適度に近いからだ。

 しかし、近いというのは危険だ。接近が過ぎると見えなくても良い、毛穴までが見えてしまい、途端に画面が汗臭くなる。場合によっては湿っぽくなる。この映画など、主人公家族が置かれている状況を考えると、水浸しになってもおかしくない。実際、やや湿り気が気になるところはある。ただ、水浸しは回避されている。回避の成功は、動物園付きの家を買うという奇想と人物の綿密な描き込みのおかげだ。

 クロウ映画の登場人物は主役から脇役まで誰も彼もが魅力的だ。この映画でも隅々まで人物が立っている。主人公は新しい場所で心機一転を図ろうとするも、資金面で危機的状況に直面する。15万ドルもの費用が要る。動揺した彼は散歩に出るといって、輪から離れる。そして、誰も見ていない(と本人が思っている)ところで、全身を使って地団駄を踏む。樽を蹴飛ばす。しかし、我に返って樽を元通りにする。見られていることに気づき、手を振る。こうした細部の積み重ねにより見えてくるのは、元々器の大きな人物であり、今はそれが見えなくなっているだけという男の真実の姿だ。

 俳優たちはもちろん、動物たちも名演を見せる。クロウは動物たちをでしゃばらせない。彼らにも感情があるとばかりに人間との密接な交流を見せる…なんてことはない。あくまで動物は動物。そういう意識が念頭に置かれているがゆえ、甘ったるさも排除されている。動物と言えば、老衰で死が近いトラのエピソードにより、主人公と死んだ妻との距離を悟らせるのも上手いところだ。妻が動くところをほとんど見せないままに、彼らがどんな夫婦だったのか、それゆえどれだけ深い哀しみが主人公を包んでいるのかが示される。

 クロウ映画で忘れてはいけないのは、セリフの豊かさだ。今回も父が息子と会話する場面で印象的なものが出てくる。「20秒だけでいい。恥をかく勇気を持て」。こういうのは気恥ずかしくなってしまう危険を秘めている。けれど、どういうわけだかクロウ映画の中では、真心のこもったそれとして温かく伝わる。心根の優しさが画面に溢れているからだろうか。

 言うまでもなく、クライマックスは動物園の開園だ。資金問題、行政、天気…といった問題を乗り越えてのオープン日。果たして人は集まってくれるだろうか。見え見えの結末だと白けることなく、その賑やかな光景に頬が緩む。クロウの勝利だ。





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