イリュージョン

イリュージョン “La femme du Vème”

監督:パヴェル・パヴリコフスキー

出演:イーサン・ホーク、クリスティン・スコット=トーマス、
   ジョアンナ・クリグ、サミール・ゲスミ、デルフィーヌ・シュイロット

評価:★★




 イーサン・ホークはしょぼくれた風貌がすっかり板についてきた。若い頃から見ているので少々複雑な気分になるけれど、これはこれで面白い。ホークはここでもしっかりしょぼくれる。演じるのはパリにやって来るアメリカ人作家だ。目的は別れた妻と娘との関係修復だ。ところが、妻からあっさり門前払いを食らう。それどころか警察を呼ばれる。ホークは捕まるまいと街中をキリンのぬいぐるみ片手に全力疾走だ。しかも置き引きにまで遭う。泣けてくるではないか。

 フランスが誇る大都市は、芸術の都の表情を封印する。『イリュージョン』に出てくるパリは、さながら不思議の国だ。優しい魔法も喋る動物も出てこない。代わりに胡散臭い男たちと謎めいた女が現れる。ホークはその怪しさに気づかない。いや、気づいても無視を決め込む。そして、知らぬ間に心を支配されていく。

 この過程が大真面目に語られる。元妻に拒絶され、娘と会う時間はない。持ち物を盗まれ、無一文になる。寂れた宿泊所で、わけのわからぬ仕事を得る。男の哀れさがどんどん際立っていく。良く言えば落ち着いている。悪く言えば陰気だ。そして陰気の匂いの方が濃い。そして陰気を長々見せられるのは辛い。

 だから、クリスティン・スコット=トーマス扮する女との場面になると画面が輝くのにホッとする。ずっとくすんだ色合いの画面だったのに、女との場面は暖色が積極的に選ばれている。女の部屋は茶色が基調になっていて、荒んだ男の心を温める。長々とした冷たい画面はこの対比のために存在した。意図するところは分かるものの、それ以上の見せ方の工夫はなかったのか。

 ホークが初めてスコット=トーマスの部屋を訪れる場面は笑わせる。ちょっとした会話の直後、女がいきなり男の唇を奪う。男は面食らうものの、一気にその気になって女を求めるのだけれど、女はそれをあっさり拒否。…したと思ったら、ふたりの顔のアップを捉えた画面、男が興奮しているではないか。なんと女、見えないところで男の股間を攻撃している!ホークはスコット=トーマスの作戦にすっかり骨抜きになる。大人の女は、これだから気が抜けない。

 終幕になると、物語の全容が見えてくる。画面の色合いの意図するところも腑に落ちる。これは寂しい魂が同じような匂いを持った魂を見つける話だ。しかし、寂しさを共有したところで新しい道は見えてこない。人はそこを抜け出す力を持った生き物だ。果たして主人公はどうか。…ということらしいのだけど、そこまで入れ込むほどに主人公の描き込みがなされないので、傍観者的立場にしかなれない。

 ホークはぼそぼそした喋りで、これがなんだか、抑えているときのジャック・ニコルソンみたい。意識はしていないだろうけれど、妙に耳に残る。これから年齢を重ねて、ますますしょぼくれていくのだろうか。どうせならニコルソンのようにアクの強いところも見せて欲しい。





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