キリング・フィールズ 失踪地帯

キリング・フィールズ 失踪地帯 “Texas Killing Fields”

監督:アミ・カナーン・マン

出演:サム・ワーシントン、ジェフリー・ディーン・モーガン、
   ジェシカ・チャステイン、クロエ・グレース・モレッツ、
   ジェイソン・クラーク、アナベス・ギッシュ、
   シェリル・リー、スティーヴン・グラハム、ジェームズ・へバート

評価:★★★




 筋を追いかけることに熱心になり過ぎていると、『キリング・フィールズ 失踪地帯』は楽しめないかもしれない。テキサス州郊外の寂れた町、若い女性たちが連続して誘拐・殺害される事件が起きる。犯人探しに躍起になるふたりの刑事、そして町に生きるひとりの少女の物語。浮かび上がる真相には捻りがなく、そこから特別の感慨が浮かび上がるわけでもない。

 しかし、だからと言ってあっさり切り捨てるのは気が早い。町にまとわりつく空気が妙にねちっこく艶かしく、肌に沁み込んでくるからだ。湿地帯の多い土地らしく、風は生温く、陽射しは優しくない。昼と夜とでは表情がガラリと変わる。町には悪意が隅々まで行き渡っている。いや、悪意ではなく獣の匂いと言い換えた方が良いかもしれない。人が人に襲い掛かる凶暴性・暴力性が人間の本能的な部分と密着する。それが伝わる画になっている。この画はなかなか腹に来る。

 ここに生きる人々の息遣いが生々しい。毎夜犬の傍らでビールを呑む離婚仕立ての刑事。家庭に恵まれながら事件のやるせなさに対処し切れないニューヨーク出身の相棒。荒んだ家庭に育ち決して無表情を崩すことのない少女。誰も彼もが何かを諦めたように、そしてそういう自分を受け入れて、毎日をやり過ごしている。事件よりもよっぽど恐ろしい生態観察。

 とりわけ少女が強く心に残る。犯罪スリラーであると同時に、残酷な青春ドラマの側面を具えている。演じるクロエ・グレース・モレッツの切り取り方の妙。長い手足を持て余しながら、時に子どもらしく、時に大人の佇まいで青春と向き合う。モレッツの、今この時期ならではの危うさがサスペンスに蹴りを入れる。

 獣の匂いが最も濃厚に漂うのは湿地帯だ。白い土。生い茂る雑草、枯れた木々、底の見えない沼。果てが見えないままに広がるそこに、無防備な命が次々放り込まれる。命は孤独をまとっている。湿地たちはそれを優しく受け入れる。しかし、なかなか解き放ってはくれない。獣の匂いで誘い込み、いつの間にか出口を見えなくさせる。それを掻い潜ることができなければ、生きる資格などないと言わんばかりに。果たして登場人物たちは湿地帯から抜け出せるだろうか。これが最も重要なサスペンスだ。

 監督を手掛けたアミ・カナーン・マンは、なんとマイケル・マンの実娘だという。なるほどタフな題材をタフなままに提示する力強さは、マンに匹敵するかもしれない。男臭いままに攻め切る父とは違い、時折女性らしい視線が見えるのが好もしい。…なんて言うと、嫌がられるか。説明不足になる犠牲を払ってまでも、作品のタフさに賭けるような人だ。今後も作品を撮ることがあるとするなら、観る方もある程度の覚悟を持って挑んだ方が良いだろう。油断していると、頭を殴られる衝撃に襲われることになりそうだ。




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