タマラ・ドゥルー 恋のさや当て

タマラ・ドゥルー 恋のさや当て “Tamara Drewe”

監督:スティーヴン・フリアーズ

出演:ジェマ・アータートン、ロジャー・アラム、ビル・キャンプ、
   ドミニク・クーパー、ルーク・エヴァンス、タムシン・グレイグ、
   ジェシカ・バーデン、シャーロット・クリスティ

評価:★★★




 グラフィックノヴェルを原作にしているという『タマラ・ドゥルー 恋のさや当て』を観ても、ためになることなど見当たらない。深く考えさせられることもない。我が身を振り返る人がいるとしたら、よほど暇なのだろう。でも、そこが良い。英国の田舎町、死んだ母の遺した家を売るべく帰ってきた女をきっかけに始まる恋のすったもんだ。登場人物たちの愚かな行動を笑って笑って、ただ笑う。

 まず、気まぐれネコのようなタマラ・ドゥルーに扮したジェマ・アータートンが愛らしい。美人過ぎないベビーフェイス。健康的な肉つき。立ち振る舞いには隙があり、男たちが思わず声をかけたくなる、良い意味でのはすっぱさを滲ませている。帰郷後、初めて舞台のひとつとなる農場に現れるときのファッションが良い。赤いタンクトップにホットパンツだけというシンプルなスタイル。これがまあ、なんともまあ眩しいのだ。アータートンは太腿が女性の魅力として、いかに大きな武器になるかを証明している。ビッチ気味の性格もよろしい。

 タマラの帰郷後に起こる恋愛エピソードの数々は、一生涯の愛だとか死と隣り合わせの危険な恋だとか、そんな大げさなものなんかではない。週刊誌の見出しにでもなりそうな、チープな匂いが濃厚だ。その積み重ねはしかし、いつしか人間の生命力と密接に結びついていく。愚かなことを繰り返しながら、人は鍛えられていく。下品な笑いも多いのに、全体の印象がむしろ品の良いものになっているのは、この魅せ方が正解だからだろう。

 タマラが帰ってきてからの一年はめまぐるしい。人気作家とその妻。彼らが営む「作家の宿」で働く青年、落ち目のロックスター。売れない米国作家に、ロックスターに憧れる少女たち。彼が伝えるのは、恋の他愛なさだ。でも他愛ないからより、打たれるものがある。あぁ、恋とはこういうものだった。

 …なんて浸ることも可能だけれど、そこにしっかり毒が盛り込まれているのが意地悪だ。登場人物の中でとりわけ不誠実な人物に、思わず笑ってしまう類の悲劇を与える。そして、その周辺人物たちの未来にも黒いものを落としていく。幸せと不幸、対極にあるはずのそれがにじり寄る。

 スティーヴン・フリアーズ監督の興味は多分、恋の楽しさよりも人間の軽薄さの方に向いているのだろう。それが悪いのではない。むしろこのなんてことのない群像劇の味に繋がっている。社会風刺性や文学論を意識しているところもあるけれど、それよりも人間の愚かさを諦めているように見えるところこそ、映画の水となる。巧みに動かされる登場人物たち。彼らは本当に幸せになれるだろうか。少なくともフリアーズは全然気にしていない。





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