幸せの教室

幸せの教室 “Larry Crowne”

監督・出演:トム・ハンクス

出演:ジュリア・ロバーツ、ブライアン・クランストン、タラジ・P・ヘンソン
   セドリック・ジ・エンターテイナー、ググ・バサ=ロー、
   ウィルマー・ヴァルデラマ、パム・グリアー、ラミ・マレック

声の出演:ニア・ヴァルダロス

評価:★★




 「アメリカの父」と言われる人だ。トム・ハンクスには善良なイメージがつきまとう。どれだけ横暴に振る舞っても、その奥には「善い人」の香りしかしないのだから、あがくだけ無駄だ。ハンクスもそれを自分の持ち味だと承知しているはずで、時折柄に合わない役柄に手を出して失敗しては、ちゃんと自分のイメージに戻ってくる。思い返せば、彼が魅力的だった映画は、「ビッグ」(88年)「フォレスト・ガンプ 一期一会」(94年)といったタイトルを挙げるまでもなく、どれもこれもその善良さが活かされたものばかりだ。きっと本人が善良なのだ。だから、その人となりが知らず知らずのうちに滲み出ることになる監督作が、善良なものとなるのは必然と言える。

 『幸せの教室』はいかにも善良な人が作った映画だ。大学を卒業していないからと務めていたスーパーをクビになる50代男が主人公。彼が第二の人生を歩み出していく様が、驚くほど善良に描かれていく。出てくるのは良い人ばかり。辛い言葉を投げ掛ける者はなし。30歳ほども歳の離れた若者たちの輪にも難なく溶け込み、教師の心もがっちり掴む。待ち受ける障害も優しい。生活の源を失うことこそ気の毒だけれど、主人公は難題を軽やかに飛び越え、見事新しい道を切り開いていく。もちろん狙い通りのことだろう。世知辛い世の中、映画の中だけでも気分良くなろうじゃないか。

 ただ、こういう善良さは注意しないと、絵空事でしかなくなるものだ。ハンクスはその罠にどっぷり浸かる。とにかく見易さを重視した演出が採られる。しかもストーリーにはクセがない。「努力は報われる」「夢は現実になる」という道徳的なメッセージが掲げられ、その軸がブレることは決してない。この素直さよ。あまりに事が簡単に進むゆえに、観ている方が不安を煽られてしまうのだ。これは現実の重力の無視へと微妙なところで繋がっていく。現実が記号化されていると言い換えても良い。善良さと現実を擦り合わせる技に乏しい。すると、映画の外観は気持ち良いと言うより、子どもっぽいものになる。

 もしかしたらこれは、ハンクスと共に共同脚本を手掛けたニア・ヴァルダロスの影響が大きいのかもしれない。善良さというものは、どこかで愚鈍さと繋がっているもので、それに気づかないとおめでたい気分ばかりが前面に出るものだ。ヴァルダロスが脚本・主演を務めた「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」(02年)がまさにそれだった。同じハンクスの監督作「すべてはあなたに」(96年)には少なくとも、生きていく翳りが感じられたことを思い出す。

 笑わせ方もワンパターンだ。素直であること、無邪気であることをバカに見せないのは有難いものの、若者と大人の間に横たわる時間の流れ、50代半ばの男が大学に戻る画にばかり注目したそれに限られている。嫌味はなくとも、幼いと言われても仕方ない。

 とは言え、ハンクスが生徒として教室にいても、ほとんど違和感がないのは讃えるべきなのかもしれない。外見は老けても、中身が若々しいからだろうか、妙に学園生活に溶け込んでいるのだ。若い友人の手を借りて、外見が今風になっていくのもおかしな魅力がある。「チョイ悪オヤジ」なんていう、くだらない言葉まで思い出す。カッコイイとは言わないまでも、知性が感じられる。

 ところで、この主人公の逆転劇は、同じことを経験した人にはどう映るのだろう。俺も頑張ろうと自らを奮い立たせるのだろうか。逆効果にしかならないような気がして、心配になる。





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