テイク・シェルター

テイク・シェルター “Take Shelter”

監督:ジェフ・ニコルズ

出演:マイケル・シャノン、ジェシカ・チャステイン、トーヴァ・スチュワート、
   シェー・ウィガム、ケイティ・ミクソン、キャシー・ベイカー、
   レイ・マッキノン、リサ・ゲイ・ハミルトン、ロバート・ロングストリート

評価:★★★




 男が目撃する終末的悪夢に魅せられる。ある田舎町の緑ある眺め。広く青い空。立ち上がる灰色の雲。轟く稲妻。妖しい動きを見せる黒鳥の群れ。エンジンオイルを思わせる飴色の雨。突飛と言うよりも、現実が僅かに歪に動いたような光景だ。これは男の妄想に過ぎないのか。それとも…。

 『テイク・シェルター』は終始、異様なまでの緊張感に貫かれている。男は毎日悪夢に苦しめられる。それに生活が支配されていく。常軌を逸した行動が増えていく。そうして辿り着くのが、嵐避けのシェルター作りというのが可笑しくて、そして恐ろしい。男はとり憑かれたようにシェルター作りに励む。他の何を犠牲にしてもそれに没頭する。言葉にするだけならそれほどに異常性は見えないのに、妙にゾッとさせられる。身近なところにある、身近な狂気が漂い始める。狂気には理由づけはなされない。

 狂気の発信源となるのは、言うまでもない、男を演じるマイケル・シャノンだ。画面に狂気という名の電流を走らせるスペシャリストであるシャノンの、観る者を硬直させる強力な凄味は健在だ。「BUG バグ」(07年)「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」(08年)「狂気の行方」(09年)…どれもこれも背筋の凍る緊迫感を創り上げていた。惜しむらくは、そのタイプキャストが息苦しくなってきたところだ。

 ところが、ここでのシャノンは普通の顔も見せる。妻と娘をこよなく愛する夫・父親の表情を見せる。見るからに恐ろしいあの目に「平凡な優しさ」を滲ませる。正常と異常の対比を、緩急豊かに魅せていく。緊張感に抑揚がついている。要するにこれは、マイケル・シャノン ショウだ。

 シャノン頼みのような展開ではあるけれど、演出は彼任せにはなっていない。シャノンの狂気を活かす工夫がそこかしこに散りばめられている。悪夢のイメージの挿入。統合失調症の影。そして何と言っても、構図が面白い。大自然をダイナミックに切り取った背景の切り取り方も愉快だけれど、より目を惹くのは人物の配置の方だ。注目したいのはシャノンのガタイ。あまりそういう印象はなかったのだけど、シャノンはデカイ。とてもデカイ。他の女たち、男たちよりも一回りデカイ。顔なんて、冗談じゃなく二倍ある。それゆえ彼らと並ぶと画面の遠近が狂う。この不安定さがストーリーに大いなる効果を上げている。わざとシャノンを手前に立たせると、よりユニークな味が浮上する。

 緊張に包まれた物語が、いつしか家族の話へと繋がっていくあたりは、美しいところだ。単純なパラノイアストーリーに終わることなく、ある家族が問題を乗り越えていくそれとして舞い上がっていく。ジェシカ・チャステインの起用や娘の耳が聞こえないという設定は、決して無駄遣いされない。

 ただ、遂にやってきた嵐の「その後」を描くのは蛇足だったかもしれない。おそらく話の広がりを狙ったのだろうけれど、ややチープな匂いがついた感。まあ、解釈次第か。





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