レポゼッション・メン

レポゼッション・メン “Repo Men”

監督:ミゲル・サポチニク

出演:ジュード・ロウ、フォレスト・ウィテカー、リーヴ・シュライバー、
   アリス・ブラガ、カリス・ファン・ハウテン、チャンドラー・カンタベリー、
   ジョー・ピングー、ライザ・ラピラ、イヴェット・ニコール・ブラウン、RZA

評価:★




 ジュード・ロウとフォレスト・ウィテカーが思わず笑い出してしまう場面がある。ここで堪らず彼らと同じように吹き出してしまった。面白くて笑えるというのではない。あまりのバカバカしさに、目を疑う愚かさに、もう笑うしかないというか何というか。このエピソードまでだったら、『レポゼッション・メン』は珍作と認定して良かったのだけれど…。

 何と言っても、設定がとんでもない。舞台となっている近未来社会の作り込みの大雑把さが強烈なのだ。SF映画はその世界観の作り込みが極めて重要になるものだけれど、作り手はそれに関して、完全なる無視を決め込んだ模様。人工臓器により心臓でも肺でもすい臓でも金さえ出せば手に入る時代。ただし、人工臓器は高額。返済が滞ったときには、回収人(レポメン)により反論の余地なく臓器を取り上げられてしまう。これが企業によってなされているというのもスゴイけれど、もっとスゴイのは回収人描写だ。ロウは回収人の一人で、こんな現実感のない職業を何の迷いもなく受け入れている。なぜだか回収人の権力は絶対で、勝手に取り立て相手の家に入り込むのは当たり前、上から目線で相手に凄み、スタンガンで気絶させ、メスだかナイフだか包丁だかで腹を裂いて、人命など全く気にすることなく、臓器を回収するのだ。こんな突っ込みどころ満載の設定が、大真面目に語られている。ブラック・コメディとして見せてくれるのであれば、まだ理解できるのだけれど、そんな余裕はどこにもなく、一直線にシリアス。なんかスゲー。ホンキってスゲー。開き直りもここまで来るとスゲー。

 ロウはしかし、ある事故に遭ったせいで、気がつくと人工心臓を移植されている。しかし、金を返すあてはなく、今度は自分が回収人から逃げる立場となる。このあたりは「マイノリティ・リポート」(02年)そっくりの展開なのだけど、トム・クルーズのようにカッコ良くキマらないのは、SF描写の完成度の低さだけが原因ではない。ロウが逃げ回るのは、結局生き延びたいからだけであって、回収人という職業そのものに対する疑問を、この期に及んで全く抱いていないのだ。社会風刺云々を大々的に掲げられても困ってしまうものだけれど、ここまで道徳的な問題が記号化されていると、何かの冗談にしか見えないではないか。冗談と言えば、事故の真相にはタマゲタ。なんちゅーか、ある人物の器の小ささに、ただただタマゲタ。

 ロウもいよいよM字が来るところまで来た感じだ。左のM字と右のM字、どちらも勢いが凄まじく、遂に互いがぶつかりそう。あと1年もすれば前頭部に離れ小島ができあがっていそうだ。髪が薄くなるのはどうしようもないのだけれど、これでSF映画のヒーローをクールにキメられてもなぁと思ってしまうのは薄情か。ただ、ひとつ気になるのは左のこめかみの近くに10円ハゲのようなものが見えた点で、離れ小島の危機を含め、このハゲ具合はひょっとすると主人公の精神的ストレスの象徴なのかもしれない…とも思う。だとしたら、さすがロウ、芸が細かい。絶対勘違いだけど。

 …というわけで、珍作の要素はふんだんに盛り込まれている。ところがこの映画、結局後味が悪くて、のどかな気分は最後には吹き飛んでしまう。ひとつはクライマックスで極まるグロテスクな描写の数々が原因。やたら血生臭くて、無関係の人間までが次々、主人公の命の前に、残酷に絶命してく。これをカッコ良いと思って演出しているところが、たまらなく嫌。それから大オチが腹立たしいのも困る。捻りを加えたつもりなのだろうけれど、自らの首を絞めるようなもの。ジョークのセンスがほとんどないということだろう。珍作と駄作は紙一重なのだった。





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【映画評】レポゼッション・メン

非情な人工臓器の取りたて屋、通称レポ・メンが自身も人工臓器を埋め込まれる悲劇を描いたSFバイオレンス・アクション。
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