イルカと少年

イルカと少年 “Dolphin Tale”

監督:チャールズ・マーティン・スミス

出演:ネイサン・ギャンブル、アシュレイ・ジャド、ハリー・コニック・ジュニア、
   モーガン・フリーマン、クリス・クリストファーソン、
   コージー・ズールスドーフ、オースティン・ストウェル

評価:★★★




 あぁ、イルカが水の中を泳ぐ。たったそれだけで胸を打たれるものがある。背景の深い青。上から降り注ぐ光。水の泡。グレイの身体が輝く。流れと一体化する。なんと優雅。海の守護神…ではないな。海の妖精と言った方がぴったり来るか。クリスチャン・ラッセン的な、でも環境問題臭くない海の画。オープニング、中盤、そしてクライマックス。作り手がイルカの泳ぎを大々的に撮るのも無理はない。とりわけ少年と絡む場面が素晴らしい。

 邦題にあるように『イルカと少年』の話だ。動物と少年少女の組み合わせは最強というのは、今も昔も変わらない。ここでもこの組み合わせが放つきらめきに重心を置いて、好感度の高い物語に仕立て上げている。海の生き物と少年というと「フリー・ウィリー」(93年)を思い出すけれど、話の設定は「マイ・ドッグ・スキップ」(00年)が一番近いのではないか。心に傷を負った少年が動物との交流を通じて成長していく。物語の背景には戦争の影がちらつく。どちらもハリー・コニック・ジュニアが関わっているのは偶然か。

 最も重要なのは、イルカと少年の化学反応をどれだけ説得力あるものとして見せられるかという点だ。イルカのウィンターは大怪我を負った状態で浜辺に打ち上げられる。それを助けるのが、父に捨てられ、大好きな従兄が軍隊に入ってしまって寂しいばかりのソーヤー少年だ。ウィンターはなかなか人間に心を開かない。しかし、ソーヤーにだけは心を許す。助けてくれたことを覚えているのだろう。つまり一頭と一人は通じ合っている。ここのところを嘘臭く見せなかった時点で、映画の勝利は半分決まった。魔法が最後まで持続する。

 ウィンターは尾びれを切断することになる。水の中で生きる生物として、それは致命的な傷になる。ここからが面白い。人工の尾びれをつけて、ウィンターを救おうというのだ。かくしてウィンターにとって機能的かつ、快適な尾びれの開発が後半のメインの問題となる。人間は身勝手な生き物だ。ウィンターのケガも人間の横暴が招いたものだ。しかし、それだけの生き物ではない。人間は知恵を持っている。技術もある。それを生かして、ウィンターの命を救う。自らに戒めを与え、しかしそこに立ち止まるのではなく、困難に向かっていくところにヒューマンな面白さが詰まっている。行儀が良いとそっぽを向くのは野暮だろう。

 傷ついたイルカの物語が、効果的に飾り立てられている。一流の水泳選手でありながら戦地で負傷、松葉杖なしでは歩けなくなった従兄の物語の絡め方。ややあからさまが過ぎるところがあるものの、終幕に向かって気持ち良く感動を呼び起こす。ハリケーンによる町の破壊、「海の病院」の経営問題、少年と少女の小さな恋…他のエピソードも踏み込み過ぎない慎ましさで、軸となる物語に絡んでいく。そしてこれらが、「家族」の問題へと昇華されていくのも悪くない。

 さて、優等生な話の中で愉快なアクセントになっていたのがペリカンのルーファスだ。いつしか海の病院に住み着いていたこのペリカン、ちょこちょこ出てきてはちょっかいを出してくる。コメディリリーフとしても、ホッとする存在としても、なかなかの演技だ。ウィンターに負けていない。

 実話を基にしているという。動物と人間は心を通わせることができる。実話物はどうしても敬遠してしまうのだけれど、この素直な映画に限っては、実話ベースで良かったと嬉しくなる。最大の褒め言葉だと思うのだけど、どうだろう。





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