セットアップ

セットアップ “Setup”

監督:マイク・ガンサー

出演:カーティス・ジャクソン、ライアン・フィリップ、ブルース・ウィリス、
   ジェナ・ディーワン、ランディ・クートゥア、ジェームズ・レマー、
   ショーン・トーブ、ウィル・ユン・リー、ブレット・グランスタッフ

評価:★




 精肉店で死体がミンチにされる場面を観たとき、思ったのだ。ブラックジョークのつもりなのだろうか。ところが、これがマジのようなのだ。特に笑わせるつもりなく、裏切りをきっかけに破綻していくダイヤモンド強奪事件の顛末を、悲劇的なそれとして描いている。ひょっとすると作り手は、「現代のシェイクスピア劇」ぐらいに思っているかもしれない。素晴らしくおめでたいと言える。

 ライアン・フィリップが仲間を裏切るのには理由がある。刑務所暮らしの父の安全を確保するべく、悪徳警官への賄賂を工面するためだ。それならば仕方がない…と微塵も思わせない時点で、映画の不安定化は決定づけられた。何しろ裏切る相手は、古くからの親友なのだ。兄弟同然の親友なのだ。ずっと支え合ってきた親友なのだ。フィリップは父と親友を天秤にかけ、迷うことなく父を選ぶ。

 あり得ない。他のどんな場面よりも間違ってはいけないところだ。父を選ぶにしても、己を死の間際まで追い詰めるくらいの葛藤がなければならない。そうであるべき理由は必要ない。男とはそういう生き物だからだ。そして、それが分からないヤツは男を名乗る資格はない。フィリップが友人ふたりの胸に銃弾を浴びせる。銃弾には「恥」の文字が記されている。なんと愚かなのだ。

 しかし、愚かなのはフィリップだけではない。…というか、『セットアップ』にはバカしか出てこない。カーティス・ジャクソンは無駄に事態をややこしくするバカだし、ブレット・グランスタッフは始まって10分で死んでしまうバカだし、ブルース・ウィリスはその後の展開が想像できないバカだし、ショーン・トーブは出てきた意味が分からないバカだ。バカの百花繚乱。バカの博覧会。バカのバカ騒ぎ。

 映画の裏側にいる者たちも知恵が足りない。犯罪シークエンスの稚拙さは何かの冗談としか思えない。行き当たりばったりの犯罪が生み出すのは、サスペンスではない。笑いですらない。呆れだ。人物の交錯は極めて雑に処理される。誰かと誰かが衝突しても、そこから新たな感情の波が生まれることはなく、代わりに無意味な血が流れ出す。

 しかも彼らは、この裏切りに端を発した出来事を、男の美学のように捉えているフシがある。父を助けたい思い。仲間を裏切る苦しみ。裏切りに対する胸の痛み。明らかになる真相の衝撃。許せるか許せないのか、自分でも分からない哀しみ。男はつらいぜ…みたいな。もちろん勘違いだ。作り手以外、誰でも知っている。

 それにしても衝撃を受けるのは、50セントことカーティス・ジャクソンの学芸会演技だ。セリフの棒読みも、常に半開きで下の歯が見えている口も、重たくてどうしようもない身体も…出番の度に、窒息しそうな圧迫感だけを画面に定着させる。演出や脚本も愚かしさもさることながら、画面が一向に弾けないのは、この主演男優のせいだ。悪いことは言わない。主演を張るのなら、演技学校にでも通ってはどうか。





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