わらの犬

わらの犬 “Straw Dogs”

監督:ロッド・ルーリー

出演:ジェームズ・マースデン、ケイト・ボスワース、
   アレクサンダー・スカルスガルド、ドミニク・パーセル、
   ラズ・アロンソ、ウィラ・ホランド、ジェームズ・ウッズ

評価:★★




 タイトルにもなっている『わらの犬』とは、古代中国において祭祀で用いられた捧げもののことだという。祭りの間は丁重に扱われるものの、用がなくなると、邪険に扱われた挙句に捨てられる。あまりにも有名な1972年映画で、サム・ペキンパーが使用したのもなるほど納得できる。ペキンパー映画を語る上では避けては通れない暴力、そしてそれを躊躇わない人間をスマートに表している。ロッド・ルーリーによるリメイク版は、果たしてそれにどこまで近づくことができたのか。

 リメイク版では舞台が、イギリスの片田舎からミシシッピー州の片田舎へと移っている。まず、これが拙い。信仰に厚く、金に塗れることもなく、アメフトを心から愛する社会。しかし、その皮を一枚剥ぎ取れば、途端に残忍性が顔を出す。湿気が多く、汗が止まらず、爽快さとは無縁の空気の中で、暴力が暴発してもショックは弱い。何かが起こる不穏さが常に付きまとうため、遂に暴力が露になるときの衝撃が衝撃にならない。舞台としてはでき過ぎているのだ。

 暴力性の蔓延も迫力に乏しい。暴力性をちらつかせるのはアメフトチームのコーチ、ヒロインの元恋人とその仲間たちぐらい。閉鎖的な空間、悪意ないままに絡みつくような暴力の恐怖は希薄だ。したがって、彼らに目をつけられるカップルの物語は、テーマであるはずの暴力よりも、愚か者に振り回される恐怖が浮上、単純なスリラーに見える。

 そして雪崩式に、遂にカップルの中に潜んでいた暴力性までもが露になる件も、単純に応戦しているようにしか見えない。いや、それどころか知恵を使って撃退していく姿には、ある種の快感が浮かび上がる。もちろんこれは、観客を共犯関係に持ち込もうなどという意図があってのことではない。

 つまりこれは暴力への向き合い方に覚悟がないということではないか。ペキンパー映画の場合は、暴力に対して揺るぎない姿勢が見られた。ペキンパーの暴力に詩情すら漂うのは、そのおかげだ。ここでは暴力を描こうとして、暴力に踊らされている。暴力の波をコントロールできず、むしろそれに振り回されている。それはこの映画を作る上で、いちばんあってはならないことではないか。「わらの犬」の意味を噛み締められないのは、寂しいことではないか。

 ジェームズ・マースデン、ケイト・ボスワースの分かりやすいカップルに襲い掛かるのは、アレクサンダー・スカルスガルドだ。オヤジのステラン譲りの狂気をたっぷり放出している。美しい顔立ちなのに、そして見栄えの良いスタイルなのに、それよりも何をしでかすか分からない危うさが前面に出ている。よれよれで汗まみれのTシャツも効果的だ。ひょっとするとタイプキャストされる危険もあるけれど、何とかそれを乗り越えて欲しいところだ。





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