白鯨/MOBY DICK

白鯨/MOBY DICK “Moby Dick”

監督:マイク・バーカー

出演:ウィリアム・ハート、イーサン・ホーク、チャーリー・コックス、
   ラオール・トゥルヒージョ、ジリアン・アンダーソン、エディ・マーサン、
   ビリー・ボイド、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ギルバート

評価:★★




 これまでにも何度も映画化されたハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』が、今度は3時間のミニシリーズとして蘇る。モビー・ディックと呼ばれる白いマッコウクジラに片足を喰われた船長が主人公。船の乗組員たちは大海原という逃げ場のない場所で、船長の妄執に巻き込まれていく。今この物語に触れると、近年大量生産されているVFX満載のブロックバスタームービーの匂いがちらつくのが興味深い。「パーフェクト ストーム」(00年)など、目指すところこそ異なるものの、設定は大いに似ている。

 …とは言え、「パーフェクト ストーム」のように男の生き様は浮かび上がらない。何しろ出てくる俳優たちから海の匂いがしないのだ。一等航海士役のイーサン・ホークは迫力に欠けるし、その下に就いているエディ・マーサンも指揮官の器とは思えない。狂言回し的役割のチャーリー・コックスはともかく、他の乗組員はもっと男臭く迫って欲しかったところだ。潮の香りが足りない。

 ただし、船長役のウィリアム・ハートはさすがの存在感を見せている。ヒゲモジャゆえに一見しただけはハートと分からないほどなのだけど、その台詞回しやニュアンス豊かな眼差しは、紛れもなくハートだ。声を荒げる場面よりも、静かな声色で凄味を利かせる場面の方が怖い。モビー・ディックにとり憑かれ、その他のことは目に入らなくなっている男の狂気をじわじわと魅せる。ハートの演技の解釈で面白いのは、片足を奪われた復讐心と同時に、その想いが強過ぎていつしかクジラの魂と共鳴を見せていくところだ。愛情に似た想いを浮上させる。

 ただ、それでも退屈を誘う場面が多いのは、クジラが姿を見せない場面に抑揚がついていないからだろう。船の上での生活の過酷さが描き切れていないし、一年以上に及ぶ航海なのに時間の感覚がいい加減に済まされている。ハートの狂気の見せ方にしても、ハートがこれだけのものを見せているのに、「他のことの一切を切り捨てる」タイプのそれしか演出しないのは、ワンパターンというものだろう。3時間の無駄遣い。

 そんなわけで結局、クジラが登場場面になると活気づく。モビー・ディックではないクジラを仕留める場面では、小さなボートに分かれた人間たちの知恵が生きている。銛を撃つことでウォーターボート風に泳がせて巨体を弱らせる。船にそのまま乗せるのではなく、切り分けての処理。油を搾り出し、樽へと保存。普段お目にかかることのできないクジラ漁の細部に見入る。「セントエルモスの火」の場面も神秘的で良かった。

 モビー・ディックの演出もまずまずだろう。視覚効果を使っての描写だけれど、それを感じさせない。「邪悪の化身」と言われるものの、それよりも神聖な生き物に見えるのがミソ。まるでポセイドンの使者のような風情。そのため人間の醜さが余計に強調されていく。海面から真上に飛び出してくるところは、巨大な柱のよう。海中を泳いでいるときは、魚雷を思わせる迫力がある。もっとモビー・ディックを眺めていたかった。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ