英雄の証明

英雄の証明 “Coriolanus”

監督・出演:レイフ・ファインズ

出演:ジェラルド・バトラー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、
   ブライアン・コックス、ジェシカ・チャステイン、
   ジェームズ・ネスビット、ジョン・カニ、ポール・ジェッソン、
   ルブナ・アザバル、アシュレフ・バルフム

評価:★★




 ウィリアム・シェイクスピア劇の舞台を現代に移し変えての映画化と言うと、バズ・ラーマン監督の「ロミオ&ジュリエット」(96年)が有名だけれど、「コリオレイナス」をレイフ・ファインズが監督した『英雄の証明』には、同じような匂いは露ほども感じない。深刻なのだ。扱っている題材ゆえということも多分にあるだろうけれど、それよりもシェイクスピアへの向き合い方、作り手の姿勢によるところが大きい気がする。何しろファインズはロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの出身だ。

 ファインズは徹底的に生々しさを求めていく。独裁的傾向の強い主人公コリオレイナスの中に、今の時代に通じる怪物性を見つけ、その欠点を迷うことなく露にしていく。したがって彼は、好感度の高い人物ではない。むしろ不快さを誘う。そしてファインズは、そう見せることを恐れない。

 この生真面目さはあまり歓迎したい気分にはならない。物語を伝えることに懸命になり、シェイクスピアのセリフを喋る悦びに浸り、シェイクスピア劇独特の自由な解釈を放棄する結果を導く。外観は堅苦しく、中身は柔軟性に欠ける。凝り固まった見方を強いられるところが多い。

 加えて画面作りも硬い。人物に寄り過ぎたカメラは、身体の躍動を捉え切れない。舞台的な展開は、物語の流れが生む快感を殺す。人物の動かし方も、いかにも舞台劇の映画化の匂いが濃厚だ。アクションがほとんど「ハート・ロッカー」(08年)ばりのタフさなのは頼もしく、その緊張感は相当なものなのだけど…。

 最も違和感を感じたのは、ファインズの演技の力みだ。「ハリー・ポッター」シリーズで演じたヴォルデモートの比ではない暗黒性が身体全体から滲み出ている。人間を人間たらしめている醜い部分を全て吐き出すかのような気配。ファインズともあろう人が、これに抑揚をつけないのはどうしたことか。一本調子に力を入れて、コリオレイナスの怪物性を広げていく。本来、静の場面は動の場面よりもホッとするところだけれど、ここでは静の場面の方が主人公の怪物性がより強調されて、気が抜けない。悪い意味で。

 その点、ヴァネッサ・レッドグレーヴはさすがの佇まいだ。絶望と復讐に支配された息子コリオレイナスに、跪いて語りかける件は、作中最も胸を打たれる場面だ。レッドグレーヴの口から飛び出すセリフが詩に変わる。長身が画面に美しく映え、眼差しが陰影に富み、空気に柔らかなものが注入される。レッドグレーヴの前には、コリオレイナスの妻を演じるジェシカ・チャステインは影が薄い。

 コリオレイナスと対立するオーフィディアスの存在意義がもうひとつ伝わらないのが惜しい。主義主張の異なるふたりの間に流れる複雑な駆け引きが巧く処理されていない。ラストに余韻がさほど感じられないのは、それゆえだろう。





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