DATSUGOKU 脱獄

DATSUGOKU 脱獄 “The Escapist”

監督:ルパート・ワイアット

出演:ブライアン・コックス、ジョセフ・ファインズ、リアム・カニンガム、
    セウ・ジョルジ、ドミニク・クーパー、スティーヴン・マッキントッシュ、
    ダミアン・ルイス、ネッド・デネヒー

評価:★★★




 基本的に脱獄物は面白い。90年代では「ショーシャンクの空に」(94年)という傑作があったし、21世紀に入ってからはTVシリーズとして「プリズン・ブレイク」(05年~09年)が気を吐いた。『DATSUGOKU 脱獄』もその流れに入る。一見したところ当たり障りのない脱獄劇のようだけれど、その細部には魂が感じられる。知恵も塗されている。味わいは多面的だ。

 話自体は「プリズン・ブレイク」ファーストシーズンが最も近いだろうか。娘の容態が芳しくないことを知った老囚人が、使える仲間を集めて脱獄を試みるというもの。個性的な仲間たちがそれぞれに役割を務めながら準備を進め、そして遂に脱獄を決行する。このシンプルな話に注ぎ込まれるルパート・ワイアット監督の創造力と想像力こそが、見ものだ。

 まず、何と言っても男たちの面構えが良い。ジョセフ・ファインズはプリンスを思わせるコミカルな顔立ちを鋭利なものに変えている。リアム・カニンガムは厳しさと温かみを浮かび上がらせている。ドミニク・クーパーは経験不足の不安に必死に立ち向かう。そして、ブライアン・コックスが娘を想う男の決意を詩情に包み込まれた表情に込める。コックスが話の中心にいることで、物語の下半身が頑丈になっているのも見逃せない。

 刑務所の内部描写は既視感を覚えながらも見入るものが多い。ヘロインに似せた毒薬作り。格闘技に沸く娯楽。男が男を狙う刑務所ならではの恐怖。いずれも見せ方に工夫がある。例えば、シャワー室でクーパーがスティーヴン・マッキントッシュに襲われる件は、直接的な描写を避けて、シャワーにより立ち上る湯気にそれを悟らせる。過剰な暴力も、観客の知性を信じた方法が採られている。

 ワイアットは、脱獄に至るまでの準備場面と脱獄決行場面を交互に描くという賭けにも出ている。時間軸通りにストレートに見せた方が分かりやすいのではないかと思いながら、しかし、意外に緊張が途切れない。これは画面作りが巧みなおかげだ。構図に気を配っている。特に縦方向に視覚を揺さぶる画面になっていて、閉塞感ばかりが強調されがちな脱獄物としては、空間に快感が宿っている。そう言えばワイアットは、この次に撮る「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」(11年)でも空間の切り取り方に抜群の冴えを見せていた。

 時間軸を弄った演出はしかも、クライマックスで大きな意味を持っていることが示される。仕掛けられているのはトリッキーな罠であり、ひょっとすると陳腐だとそっぽを向かれてしまう危険を秘めている。その危険を切り抜けることができたのは、創造力と想像力が物語を語ることに捧げられているからだろう。とりわけコックスが演じる老人の内面の動きに説得力を持たせられた意味は大きい。娘を想う気持ちを軸に置き、脱獄の動機と意志に厚みを加え、それゆえの決断と結果にイマジネーションを走らせる。

 映画の結末の先にも物語は広がっていく。そこに見えるのは希望だろうか。絶望だろうか。答えは示されないものの、信じたいものはひとつだ。そこに作り手の優しさを見るようで、胸が熱くなる。





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