マリリン 7日間の恋

マリリン 7日間の恋 “My Week with Marilyn”

監督:サイモン・カーティス

出演:ミシェル・ウィリアムス、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、
   ドミニク・クーパー、ジュディ・デンチ、エマ・ワトソン、
   ジュリア・オーモンド、ゾーイ・ワナメイカー、ダグレイ・スコット

評価:★★




 彼女はハリウッドの大スターだ。良い俳優になりたいと願っている。目指すところかもしれない、実績ある俳優が監督する新作に賭けている。既に撮影地であるロンドンに降り立っている。勝負は目の前だ。なのに自信が持てない。周りがどれだけ褒め称えても自信が持てない。それゆえ撮影現場は混乱する。いつも遅刻し、NGも多く、納得できなればそこから前に進めない。監督やスタッフを呆れさせる。

 ミシェル・ウィリアムスはこの女優をとても魅力的に演じている。持ち味である生活感の大半を消し去り、これまで前面に出てこなかった色気を捻り出し、硝子の佇まいの中に「コケティッシュ」を炸裂させる。どれだけ周囲を振り回しても、それでも彼女に肩入れせずにはいられない。そんなに追いつめないで。もう少し心に余裕を。本当の彼女を理解してあげて。ウィリアムスが役の芯に近づけば近づくほど、彼女は確かに輝く。だから、あぁ、だから「マリリン・モンロー」を名乗って欲しくなかった。

 そうなのだ。ウィリアムスは『マリリン 7日間の恋』で、人類史上最大のセックスシンボルを演じている。何の説明もいらない、20世紀に輝くアイコン。彼女の代わりを務められる人など、誰もいない。スターを超えた存在であり、永遠の謎であり、意図的には決して作り出せない奇跡。ウィリアムスは舌足らずな喋り方や隙があり過ぎる仕草、何よりその無邪気さを丁寧に掬い上げているけれど、やっぱりモンローとは違うのだ。モンローが醸し出す空気は、演技により創り出せるものではない。肉体そのものが特別だったモンローを演じられる俳優はどこにもいないという現実が、ウィリアムスに感心しながら常に付きまとう。モンローとウィリアムスでは、あまりに俳優の資質が違う。いや、資質が似ていても、モンローは創り出せない。

 これがモンローのイメージを壊すような作りになっていれば、まだ良かっただろう。意識しなくても滲み出てしまう色気。セクシーさではなく「俳優」として認められたい野心。役柄になりきるメソッド演技への傾倒。けれど追いつかない技術。誰かに依存する傾向があり、時に他人に迷惑をかけることがある。情緒不安定で、皮肉にもそれがまた魅力となる。スターの輝きを支えるには心許ない、脆く儚げな心。これはこの映画で見えてくるモンロー像であり、すなわち世間が彼女に対して抱いているイメージがそのまま提示される。だからモンローを魅せようとすればするほどに、彼女がいない現実を突きつけられる。

 モンローは「王子と踊り子」(56年)の雑用係であるコリン・クラークと、恋と呼ぶには幼過ぎる関係を結ぶ。映画はクラークの目から見たモンローを描いていているのだけれど、彼が完全なる狂言回しに落ち着いているのが物足りない。当然のようにモンローに惹かれ、思いがけず彼女と距離を縮め、共に小旅行に出かけるまでになる。それなのにほのかな恋心以上のものが見えないとはこれいかに。クラークの目は、まるでモンローを観察するためだけにあるようだ。せめて「ひと夏の恋」のような甘酸っぱさを出せなかったのか。エディ・レッドメインが役柄に合っているというのに、勿体無い。

 さて、「王子の踊り子」と言ったら、もちろんサー・ローレンス・オリヴィエだ。意外やケネス・ブラナーが巧みにこなしている。モンローの奔放な振る舞いに苛々しながら、同時に笑いを誘う。モンローとは対照的な存在としての役割を果たしながら、しっかり自分も光っている。もっとモンローとオリヴィエの関係性に突っ込んだ方が面白かったかもしれない。





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