長ぐつをはいたネコ

長ぐつをはいたネコ “Puss in Boots”

監督:クリス・ミラー

声の出演:アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック、
   ザック・ガリフィアナキス、ビリー・ボブ・ソーントン、エイミー・セダリス、
   コンスタンス・マリー、ギレルモ・デル・トロ、マイク・ミッチェル

評価:★★★




 「シュレック」シリーズ(01年~)からのスピンオフを作るとき、誰を主人公にするべきか。ひょっとすると作り手は、ドンキーかネコか迷ったかもしれない。けれど、そうしてネコを選んだのは、正解と言って良いだろう。ドンキーはエディ・マーフィのヴォイス・パフォーマンスが愉快だったけれど、全編出ずっぱりではさすがに鬱陶しいだろう。けたたましいマシンガントークが、実写よりもアクションが派手になるアニメーションの中では煩く感じられるはずだ。脇にいてこそ輝くキャラクターだ。

 その点、ネコは主人公としての器も具えている。柔らかで美しい毛に包まれた見た目の愛らしさ。キザな振る舞いがやけに可笑しくキマるスマートさ。時折顔を見せる動物の本能のユーモラスな味。ちょいと動きがついて、気の利いたセリフがあれば、ほら、小さな身体のネコが見事な主演男優となる。元々からして「怪傑ゾロ」のオマージュ的キャラクターだったけれど、ラテンヒーローの味がたっぷり注ぎ込まれて、いよいよロマンティックに突っ走る。

 期待通り動の場面で魅せる。メスネコのキティとの夜の街での追いかけっこ。走る馬車馬の上での活劇。天に向かって伸びていく豆の木に乗ってのジェットコースター的アクション。草木が生い茂る森の中での「ジュラシック・パーク」(93年)風脱出劇。ネコが柔軟性豊かなパフォーマンスで画面を活気づける。3Dも快調だ。実写とは違い、アニメーションの分野では完成形に近づいている。飛び出しも奥行きもたっぷり。ごちゃごちゃしがちなアクションでも美しい。

 ネコのルーツが探られるのが楽しい。どのような過去がネコにあったのか。ミステリアスな存在だったネコのそれが、逞しい想像力たっぷりに描き出されていく。子ネコ時代の可愛さ。人間の母親の愛情。孤独なタマゴとの友人のような兄弟のような関係。お尋ね者になった事件。ネコがネコになった理由がトリヴィアル的面白さふんだんに語られる。ネコの名前が明かされるのは余計だけれど…。

 タマゴの創り込みにはもうひとつノレないところがあった。タマゴとネコが仲良くなる絵には、シュールな味がある。ただ、タマゴに描かれた目鼻口が妙に人間っぽくて、異形の生物を眺めている違和感が前面に出てくる。シュールな面白さがいつしか消えてしまう。その内面の複雑な描き込みも、意図したほどには捌き切れていない。善悪の中間を揺らめいているというより、多重人格のように見えてくる。

 「シュレック」シリーズにあった、ドリームワークスならではの捻りも希薄だ。ディズニーのようなお行儀良さを放棄して、真実をありのままに突きつける。偽善を炙り出す技が鋭利で、なおかつ届けられるメッセージは間違っていない。『長ぐつをはいたネコ』はこの点で物足りない。むしろディズニー寄りで、大胆さに欠けるところがある。ネコが可愛らしいためあまり気にならないものの、見逃してはいけないところだろう。





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