SHAME シェイム

SHAME シェイム “Shame”

監督:スティーヴ・マックイーン

出演:マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガン、
   ジェームズ・バッジ・デイル、ルーシー・ウォルターズ、
   ニコール・ベハリー、マリー=アンジュ・ラミレス

評価:★★★




 男は不自由していない。容姿に恵まれ、充実した仕事があり、誰もが羨む高級マンションに住んでいる。ただし、セックス依存症だ。それが、ただそれだけが、男の心を天国にも地獄にも変える。その魂は夜のニューヨークを彷徨う。行き場をなくして、行き場を探して、当てもなく彷徨う。なんとせつないのだろう。

 いや、その魂はしかし、同情を拒否する。哀れと思われたくないと、隙を与えない。男の一日はセックスで占められている。マンションはもちろん、バーも、電車も、道端も、仕事場も、全てはセックスに通じている。呼吸の合間にセックスが潜り込み、自分の感情も他人の感情も寄せつけない。身体をどれだけ重ねても、そこに愛が受け入れられる余地はない。

 スティーヴ・マックイーン監督はこれを徹底している。これまでの男の人生に何があったのか、それすら見せることなく、セックスにとり憑かれた男の生態観察に徹している。異物として、他者に依存する傾向の強い妹を放り込むも、それはあくまで実験のようなものだ。男に何が起こるのか、強引に隙間に異物を注入することで何が起きるのか。

 実験により魂の真ん中に僅かに近づく。その魂は決して自分を好きなわけではない。満足していない。このままではいけないと思っている。普通のデートを試したり、心の結びつきを求めたりする。しかし、深まるのは人間関係ではなく、苦悩でしかない。セックスからは決して逃れられない。もちろん、それでも男に手を差し伸べられはしない。

 マックイーンはしかし、魂を怪物とは見てない。男の意思だけではコントロールできない厄介なものには違いないものの、それはあくまでセックスにとり憑かれた魂であり、魂が何か別のバケモノに変態したわけではない。魂が魂のままに苦悩している。それを見誤らなかったところが急所だ。魂との距離が無駄なく保たれている。

 ほとんど唯一、魂が無防備になる瞬間がある。ステージシンガーである妹がジャスの名曲「New York, New York」を歌い上げる場面だ。隙間が広がる。身体が硬くなる。思考が停止する。涙がこぼれる。裸の魂はしかし、すぐに隙間を消し去る。それに胸を掴まれる。

 酷く冷静な作りの中で、マイケル・ファスベンダーの肉体は難しい技を迫られている。四六時中セックスに囚われ、絡み取られ、欲情を強いられる。道具である女の身体を求め続ける。哀しみが付きまとう。そこに他者の欲望を刺激するようなエロティシズムは存在しない。剥き出しの肉体は遂には皮を剥ぎ取られ、筋肉が露になる。痛い。ヒリヒリする。悲鳴を上げる。もはや何を求めているのか分からない。肉体が語り掛ける。相当に過酷な技だ。

 『SHAME シェイム』が見せる先にあるのは、何かに依存してしまう恐ろしさであることは言うまでもない。自分の核となるものが不安定になり、いつしか何かに頼ってしまうこと、頼らざるを得なくなることは往々にしてある。男の魂を笑うことはできない。背筋が寒くなる。すぐ傍で孤独が息をしているのに気づく。シェイムの意味を考える。





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