おとなのけんか

おとなのけんか “Carnage”

監督:ロマン・ポランスキー

出演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、
   ジョン・C・ライリー、クリストフ・ヴァルツ

評価:★★★




 コメディ仕立てで良かった。実力派だと誰もが認め、アカデミー賞授賞式の常連と言って良い4人が激突するのだ。重たい人間ドラマなんかだったら、観る前からゲンナリしてしまうことだろう。ロマン・ポランスキー監督も承知なのだろう、いきなり4人を同じ画面に放り込み、その可笑しさを追求することに専念する。

 『おとなのけんか』の発端は子どもたちの喧嘩だ。和解の場を持った二組の夫婦が、小さなボタンのかけ違いから思わぬ対立構造を深めていく。対立は家族間に留まらない。婚姻関係なんてものは、何の力にもならない。それぞれが己のエゴを剥き出しにしたとき、頼れるのは自分だけだ。価値観は十人十色。全く同じそれなど、存在しない。それを頭に入れた上でやり過ごせなければ、人生なんてやってられない。

 かくして大の大人が罵り合いを始める。焦点がどんどんズレていく。子どもの喧嘩とは全く関係のないことが火種になるのが可笑しい。ハムスター、デザート菓子、画集、ニックネーム、薬、スコッチ、チューリップ……。何でもない部屋の装飾が凶器に変わる。個人的なものであればあるほど、くすぐりが激しくなる。こういうこと、よくある。

 ほとんどアパートの一室で展開する物語なので、画面に抑揚をつけるのは難しいだろう。しかし、そこはポランスキー、要所要所にポイントを置いて乗り切っている。ゲロが、アルコールが、ケータイが、戦況を変える。リアルタイムで進行していく流れも心理的圧迫感を強調していく。このあたりは脚本の力が大きい。

 役者もそれぞれが楽しげにエゴや本性を爆発させている。中でも弁護士を演じるクリストフ・ヴァルツは秀逸。子どもの喧嘩になどたいして興味なく、さっさと切り上げたいと無神経に突っ走る役柄。場が熱くなればなるほど、法廷慣れしているからか、冷静になっていく。非常に憎たらしい立ち振る舞いなのだけど、憎み切れはしない。ヴァルツの陰影のつけ方が、それにスピード感を肉付けする。あるものが「ダメ」になったときの反応がサイコー。ブタ笑いやモノを食いながらの電話もサイコー。

 終始可笑しいものの、息苦しさは気になった。密室劇だし、それが狙いであることも分かる(観客は“第五の大人”として目撃することになる)。ただ、結局これは舞台向きの題材だと思う(原作はヤスミナ・レザによる戯曲)。ポランスキーも密室ゆえに時折距離を図り間違えているように見える。構図は決まっても、重量でバランスを崩す。映画の快感と舞台の快感、その違いを鮮明にする。可笑しいのに首を傾げる。できることなら、このキャストで舞台版を観たい。

 あ、そうそう。結論は…オトナッテメンドウクサイ…で良いですか?





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