ヒューゴの不思議な発明

ヒューゴの不思議な発明 “Hugo”

監督:マーティン・スコセッシ

出演:エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、
   ベン・キングスレー、サシャ・バロン・コーエン、レイ・ウィンストン、
   エミリー・モーティマー、ヘレン・マックローリー、
   クリストファー・リー、マイケル・スタルバーグ、
   フランシス・デ・ラ・トゥーア、リチャード・グリフィス、ジュード・ロウ

評価:★★★★




 まず、何と言っても、1930年代フランス、パリの描写が素晴らしい。人と人が行き交う雑踏。光に満たされた夜。情緒溢れる佇まいの建築の数々。とりわけ物語の大半を占める、駅構内が魅力的だ。ダイナミズム溢れる美術を背景に、当時のエネルギーが濃厚に漂っている。郷愁を誘い、しかし当時にしてみたらモダンだったに違いない装置が、画面の奥行きを深くしていく。

 マーティン・スコセッシ監督はパリに映画の魔法を振り掛ける。決して華やかではないのに温か味ある衣装。物語を壊さないよう控え目に奏でられる音楽。スコセッシにしては賑やかな照明。スピード感たっぷりに突き進んでいく撮影。リズミカルに畳み掛けられる編集。視覚効果さえもマジカルに輝く。巨匠にしてみたら当然のようにも思えるものの、それらが素晴らしいバランスを保っているのはやはり神業的と言える。神業は空間の気持ち良さを創り上げる。縦の方向に開放感がある。天にまで届くのではないかと感じられるほどに、世界が広がりを見せていく。

 魔法の中心にいるのは機械人形だ。若くして死んだ父が息子に残した謎の機械人形。それに導かれるように人々が奇跡を探っていく。時計塔。歯車が音を立てる壁の裏。ハートマークの鍵穴。無垢な少年と少女。初恋の味。美しい花に洒落たコーヒーショップ。スコセッシはロマンティックというものが何なのかを知り抜いている。現実的な物語なのに、紛れもないファンタジーになっている。

 そうして魔法に魅せられた人々が辿り着くのは映画の力だ。突然父を亡くした少年。夢を失った老人。彼らと共に傷ついた人々。彼らが映画の力により生きる希望を見出していく。存在自体が映画の記憶と言うべきスコセッシが、それを信じていることが明確に伝わる。たかが映画。されど映画。映画が何かを変える。それだから語り継ぐ価値がある。

 「列車の到着」という映画を人々が鑑賞する場面がある。画面奥から列車がこちらに向かってやってくるだけのシーンだ。映画に慣れていない観客は、画面を突き破って出てくるのではないかと悲鳴を上げる。これは今の時代、3D映画として受け継がれている。その証拠にスコセッシは、列車が線路を飛び出し、駅構内を突っ切っていく場面を挿入している。3D映像にも意味がある。

 とは言え、スコセッシが最も惹かれたのが映画創世記を支えたジョルジュ・メリエスを取り上げるところにあったのは間違いないだろう。リュミエール兄弟の発明した映画に出合うことで、それに激しく魅せられたマジシャン。代表作である1902年映画「月世界旅行」でも分かるように、SFXの父とも呼ばれている。スコセッシは膨大に膨れ上がった映画の記憶を彼に捧げている。だからだろうか、気がつくと目には水が溜まっている。自分が生まれる何十年も前に映画を発明した人がいて、それに感動した人がいて、それを自分で伝えることを選んだ人がいて、そうして、そうして、長い長い時間を繰り返しながら、映画は今も生きている。

 優れたファンタジーは、忘れ難い現実を映し出す。『ヒューゴの不思議な発明』の優しさと温もりが、その証拠だ。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ