ヤング≒アダルト

ヤング≒アダルト “Young Adult”

監督:ジェイソン・ライトマン

出演:シャーリズ・セロン、パトリック・ウィルソン、パットン・オズワルト、
   エリザベス・リーサー、J・K・シモンズ、コレット・ウォルフ、
   ジル・アイケンベリー、リチャード・ベキンス、メアリー・ベス・ハート

評価:★★★★




 大抵の映画の主人公は「成長」というものを見せる。苦難に直面し、挫折を味わい、自暴自棄になり、しかしそこから這い上がり、気がつけばほら、私は生まれ変わっているじゃないの。観ている方は、それを「良い話」だと感心する。ともすれば「私もやってやる」「俺も頑張ろう」なんて気合いを入れたりもする。『ヤング≒アダルト』はそんなのが幻想であると言い放つ。そうなのだ。この映画のヒロインであるメイビスは、一切成長しない!

 もう若いとは言えなくなってきたヒロインはティーン小説のゴーストライター。離婚歴あり。彼女は自分が完璧と信じているフシがある。直すところなんてどこにもないと思っている。いや、現実を直視しない技に長けていると言うべきか。どん詰まりのような人生でも、別に自分を呪うこともない。それどころか「ビッチ」を極める。身勝手な行動で周りを振り回し、自分の欲望の趣くままに突き進む。大人になれない大人。ジェイソン・ライトマンはビッチをビッチのままに描き出す。なのになぜだろう。彼女が愛しい。ビッチなままに愛しい。そしてもちろん、無茶苦茶可笑しい。

 メイビスの生態が凄まじい。キティちゃんTシャツとスウェットパンツで出歩くのは序の口。寝起きにコーラをラッパ呑み。だらだらしたままTVゲーム。食事はアイスクリームで、朝から晩まで酒浸り。風呂にも入らず、化粧も落とさず、気がつけば、今日が終わっている。歯磨きで嘔吐く場面が出てこないのが不思議なくらいだ。これをあの美しいシャーリズ・セロンが演じているのが強烈だ。美貌そっちのけの、捨て身の役作り。

 ビッチは暴走する。幸せな結婚生活を送る高校時代の恋人に赤ん坊が生まれたことを知るやいなや、大嫌いな故郷に乗り込み、彼の心を取り戻そうと一直線。彼が口にした言葉の全てが妻や結婚への不満へと翻訳され、さらに自分への愛の言葉に置き換えられるのが笑える。「王子様、私今度こそ間違いを犯さないわ」と猪突猛進。あまりにも痛々しく、惨めで、でもなんだかその潔さが偉くも見えるのが怖い。

 そう、ちょっとでも偉いなんて思ったのなら、それはライトマン監督と脚本家ディアブロ・コーディの術中にハマったという証拠だ。本人がいくら着飾っても、成功を語っても、その裏には孤独が見える。哀しみが漂う。彼女を笑いながら、どこかで胸の痛みを感じている。彼女の中に自分を見る。演出も物語もそれをジャッジしない。それが生きることだとただ肩を叩く。

 メイビスの視線が面白いったらない。王子様にはあからさまに熱い視線を贈る。その妻には露骨に敵意を見せる。話を聞いてくれる不細工な元クラスメイトには憐れみを隠さない。ある意味、正直であることを極めているのかもしれない。しかも彼女は、周りの自分への視線に無視を決め込む。するとどうだろう、田舎町の偽善までもが浮かび上がってくる。

 メイビスが赤ん坊の命名パーティを台無しにしてからの流れには大笑い。ズタボロ状態でパットン・オズワルト(しみじみと良い味)と抱き合う件は名場面だ。思わずグッと来る。朝になってその妹と話していくうちに、少しずつ元気を取り戻していくのにもホロリとする。しかし、ちょっと待て。元の状態に戻っていないか?ビッチの気配を取り戻していないか?こいつ、どう見ても懲りてない!彼女は再びビッチの人生を歩んでいくのだろう。もちろん褒めている。





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