アナザー プラネット

アナザー プラネット “Another Earth”

監督:マイク・ケイヒル

出演:ブリット・マーリング、ウィリアム・メイポーザー、
   ロビン・ロイド・テイラー、マシュー=リー・アルルバフ

評価:★★★




 交通事故の加害者と被害者を描くというと、最近だとテリー・ジョージ監督の「帰らない日々」(07年)というのがあった。これはそれぞれの心理状態を重苦しく描き出した作品だったけれど、似たシチュエーションに置かれる『アナザー プラネット』はしかし、それとは大分趣が違う。突如空に「もうひとつの地球」が現れ、そこから発せられる見えない力に踊らされるようにスピリチュアルな匂いを濃くしていくのだ。SF要素も盛り込まれていく。

 実のところ、加害者も被害者も、描かれる心象に新味はない。わき見運転で母と子を殺してしまった女は、自分が犯した罪の重さに苦しむ。妻子を亡くしてしまった男は、絶望的な喪失感から立ち直れない。加害者がさっさと罪から逃れてしまってはバカバカしいし、被害者があっさり妻子を忘れてしまっては軽過ぎる。被害者と加害者が辿る当然の心の道筋を追っているに過ぎない。

 女が正体を隠して男の家の清掃婦として潜り込むという展開こそ映画的だけれど、次第に惹かれ合うというのはメロドラマみたいでチープすれすれ。一瞬は求め合っても真実が分かればそこで終わってしまう関係というのも見え見え。結末は唐突な落とし込みぎりぎり。つまりここには、加害者と被害者の距離が次第に近づいていくというサスペンスがない。緊張が萎びている。

 ところが、それを補うようにパワーを見せるのが「もうひとつの地球」なのだ。調査によると、「もうひとつの地球」は地球のパラレルワールド。地球と全く同じ環境であり、同じ人間が住んでいて、同じ歴史を持っているのだという。それはもうひとりの自分が生きていることを意味する。この不思議な惑星が常に見えていることが、物語の奥行きを意外なほど深いものにしていく。

 「もうひとつの地球」を様々なことの象徴として見せる手法が巧い。喪失感。罪悪感。理想と現実。希望と絶望。赦し。選択。愛や傲慢。寛容と不寛容。「もうひとつの地球」が様々な感情を包み込み、それらを混じり合わせる。地球から見えるそれは、あぁ、なんと美しい。女はそれに憧れるように、導かれるように、魅せられるように行動する。もうひとりの自分は何をしているのだろう。それに向き合うことが、自分を知る旅になっていく。かなり強引なところがあるものの、その力技がなかなか優雅だ。美しい映像になっていることもあり(あえてCG風の美を目指しているように思われる)、それに案外すんなり乗ることができる。

 脚本とプロデュースを手掛けているブリット・マーリングが加害者役で主演している。綺麗なブロンド、目鼻立ちのすっきりした顔立ちで、謎めいた美しさを湛えている。場面によっては地球に堕ちた女神のようだ。その彼女が打ちのめされる画は、映画の見所のひとつと言って良い。人間となった女神が地上の業にもがき苦しむ様が、人間の罪深さを嘆いているかのようだ。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ