人生はビギナーズ

人生はビギナーズ “Beginners”

監督:マイク・ミルズ

出演:ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン、
    ゴラン・ヴィシュニック、メアリー・ペイジ・ケラー、
    キーガン・ブース、カイ・レノックス、チャイナ・シェイバーズ

評価:★★★




 いきなり主人公の父親の死が報告される。ひょっとして安っぽいお涙頂戴に走るのではないかと危惧するのだけれど、有難いことに綺麗に裏切られる。『人生はビギナーズ』は全編にもの寂しさが漂っている。しかし同時に、軽妙で、カラフルな味もたっぷり振りかけられている。

 画面を沈ませない原動力になっているのが、父親を演じるクリストファー・プラマーであることは間違いない。プラマーは妻を亡くして4年、75歳にしてカミングアウトするゲイだ。彼は自分を偽ることをやめる。人生を目一杯楽しむことを選ぶ。その後、ガンで余命僅かであることを宣告されても、死に向かいながら生を実感することを恐れない。プラマーが、この自分本位に見えなくもない役柄に、温かな息を吹き込む。

 チャーミングなのだ。年下の恋人と顔を合わせると声のトーンが上がったり、若者の文化に溶け込もうと努力したり、仲間たちとの野外での遊びに興じたり、ムースでヘアスタイルを遊んだり…。生きるということはどういうことなのか。限られた範囲の中で弾けるプラマーの眺めの良さが、物語の風通しを良くしている。

 この父親が息子に伝えることこそ、映画のテーマだ。ユアン・マクレガーは良い奴だけれど、何事にも自分からぶつかっていくということをしない。人付き合いが苦手で、いちばんの友人は犬のアーサーだ。当然恋人もいない。その彼が父の姿を見て、父の言葉を思い出して、踏み出していく。マクレガーが男の内面を正直さを忘れずに演じていて、好感を持つ。38歳にもなってちょっと恥ずかしい気がしないでもないけれど…。

 出てくる人物は皆、臆病なのだ。マクレガーも、彼と恋に落ちるメラニー・ロランも、父の恋人となるゴラン・ヴィシュニックも…。プラマーが愉快な晩年を過ごすことができたのは、臆病である自分に立ち向かったからだ。臆病であることは、要するに傷つくことを恐れているということで、これは生きていれば誰もが感じる瞬間があるだろう。それを笑うことなく、惨めに感じさせることもなく、ジャッジを下さないままに見つめているのが美点だ。

 過去と現在を行き来する作法がやや雑に感じられるのは惜しいところだ。現在のマクレガーの心象に見合った過去が次々挿入されていくものの、タイミングが悪いのか、選んだエピソードに若干のズレがあるのか、あまり気持ちの良い行き来ではない。普通に時制通りに演出した方がすっきり見られたのではないか。

 でもまあ、そんなことで好感度が落ちるような映画ではない。プラマーの眩しい眼差しと犬のアーサーの愛らしさで全て帳消しだ。そう、アーサーが大変可愛らしいのだ。本名をコスモと言うらしいアーサーは、しつけが難しいとされるジャック・ラッセル・テリア。いつもマクレガーと一緒で、マクレガーが動けばいじらしく後をついてくる。離れ離れになるときには、泣き声で訴えるのについホロリ。彼もまた臆病なの犬なのだ。大好きだったプラマーと別れ、その息子であるマクレガーもまた消えてしまうかもしれないと心配しているのだろうか。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ