ドラゴン・タトゥーの女

ドラゴン・タトゥーの女 “The Girl with the Dragon Tattoo”

監督:デヴィッド・フィンチャー

出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、
   スティーヴン・バーコフ、ステラン・スカルスガルド、
   ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン、ベンクトゥ・カールソン、
   ロビン・ライト、ゴラン・ヴィシュニック、ジェラルディン・ジェームズ、
   ジョエリー・リチャードソン、エンベス・デヴィッツ

評価:★★★




 オリジナルであるスウェーデン映画(09年)が封切られてから、まだ2年しか経っていない。それなのにもう、ハリウッドリメイクが登場する。オリジナルの記憶がまだ鮮明に残っているというのに、いくらなんでも早過ぎるだろう。成功するとは思えない。ハリウッドのネタ切れは、本当に深刻だ。…と嘆いていたら、あらしかし、『ドラゴン・タトゥーの女』はさすがはデヴィッド・フィンチャーと言うべきか、相当良くできたスリラーだ。そう言えば、オリジナルは良くも悪くも主演のノオミ・ラパス頼みの映画だった。ハリウッド版は映画の骨格自体が頑丈になっている。

 物語自体は何ら変わりがない。間違い探しができるほどに似通っている。これはもう、原作本に忠実に作ってあるということなのだろう。では、わざわざ再構築する理由はどこに見つけるべきなのか。もちろん配役ということになる。ミカエル・ニクヴィストが演じたジャーナリスト、ミカエルをダニエル・クレイグが演じる。グッとシャープさが増した印象だ。だが、急所となるのはリスベット役の方だ。ラパスに代わる新ヒロインを演じるのは、ルーニー・マーラだ。

 そう、フィンチャーの前作「ソーシャル・ネットワーク」(10年)ではお嬢様風だったマーラが、それとは180度異なるリスベットとして画面に鮮やかな蹴りを入れる。マーラがラパスと最も異なっているのは、ハードな言動とは裏腹に、常に壊れそうな脆さを感じさせるところにある。ラパスにもそういう側面はあったものの、それは演出されてのものだった。マーラのそれは天然的なところがある。ガリガリの身体。奇抜なへアステイル。ピアスだらけの顔。剃り上げられた眉毛。背中のドラゴン・タトゥー。全ては硝子細工のような本質を必死に支えるがゆえのものであることが、無理なく伝わってくる。つまりリスベットに感情移入しやすい。その上、マーラの動きには、クレイグ同様にスピード感がある。不思議な快感を感じさせる動きだ。

 マーラを得たフィンチャーは、いつも通り冷静に物語を進めていく。ミカエルの物語とリスベットの物語が交互に描かれる序盤こそ、ややじれったいところがあるものの、遂にふたりが顔を合わせてからはフィンチャー節が炸裂していく。わけても編集の冴えは抜群だ。別々の場所で全く異なる調査をしているミカエルとリスベットが、一定間隔で交互に描き出されていく場面。混乱が避けられ、サスペンスが刺激され、緊張感が高まり、そして気がつけば話がひとつに合流していく。撮影や音楽との呼吸があまりにも気持ち良く、物語にグッと潜り込んでいくことになる。

 そうなのだ。配役以外に最もスウェーデン版と違いを感じさせるのは、ミステリーの世界への誘いが極めて巧みになされている点だ。リスベットだけが前面に出るのではなく、彼女は登場人物の一人として機能し、40年前、とある島で起こった少女の失踪事件の謎が持つ魅力により物語を引っ張っていく。見えてくるものも多い。写真が持つ力。ナチスの不穏な匂い。富豪一族内部のどろどろした関係。人間の複雑な心理構造。女心。もちろん真相が持つ吸引力。舌に残る味わいが至るところに散りばめられている。フィンチャーの鮮やかな演出の賜物だろう。この人は猟奇的要素の絡んだ作品だと水を得た魚となる。

 フィンチャーのマジックはタイトルクレジットから始まっている。トレント・レズナーとアッティカス・ロスによる「Immigrant Song」に乗せて、粘りある黒い液が画面一杯に広がっていく。おどろおどろしい物語とシャープな展開が連想される。身を乗り出す。マジックにハマる。北欧独特の凍てつく寒さが感じられれば、ほとんどパーフェクトだった。





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