ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い “Extremely Loud & Incredibly Close”

監督:スティーヴン・ダルドリー

出演:トーマス・ホーン、トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、
   マックス・フォン・シドー、ヴィオラ・デイヴィス、ジョン・グッドマン、
   ジェフリー・ライト、ジェームズ・ガンドルフィーニ

評価:★★★




 とても刺々しく感じられる。ひりひりと痛い肌触りがずっと続く。人々の思いが溶け合わないのが心苦しい。無理もない。2001年9月11日に起こったあの出来事は、そう簡単に消化できるものではない。『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』はそれをありのままに描写する。心地良い空間は決して広がらない。スティーヴン・ダルドリー監督は想像以上に厳しく、真摯に、この題材へ向き合っている。ただ、これがずっと続くのは辛いかもしれない。

 そう思っていたところに新たなる展開が訪れる。沈黙の老人が姿を見せるあたりから、作品が別の表情を見せ始める。無関心や拒絶の毎日が、熱を帯び始める。荒れ果てた画面に色が付き始める。少年の目に、光が灯り始める。もちろん無意識の流れに身を任せている。

 父親を失った少年が、父の遺した鍵に合う鍵穴を求めてニューヨーク中を探し回る物語。父の死を受け入れられない少年のささやかな冒険劇。少年は多くの人々に会うことで、喪失と向き合うことになる。出会う人々の種類は様々であるべきだ。多種多様の人々が住むアメリカならなおさらだ。ところが、このあたりはあっさりと済まされる。ダイジェスト版の趣で、少年の早口のナレーションとともに、次から次へと人が現れ、消えていく。それに何の意味があるのだろう。

 ところが、ちゃんと意味があることが分かるのだ。鍵探しが少年にもたらすもの。それは実体のあるものではない。しかし、人と接することが決して得意ではない少年が、知恵と勇気により駆け回ることは、その心を思う以上の水で満たしていく。

 尤も、それは清水ではない。時に濁りを感じさせる。傷に沁みることもある。痛みを与えることもある。辿りつく先にあるものは、少年が期待しているようなものではない。少年は走る。泣く。叫ぶ。真っ青なブルーの瞳の少年が沈黙の老人にある事実を告白する場面が胸に迫る。トーマス・ホーンの痛みとマックス・フォン・シドーの痛みが触れ合い、更なる痛みを引き起こす。

 少年を包み込むものは何か。定番とは言え、その優しさがとても嬉しい。喪失感に包まれていた少年はしかし、孤独ではなかった。明らかになる大きな愛と、それが織り上げていくさらなる愛により、少年は守られていた。少年がそれに気づくとき、喪失は再生へと移り変わる。優しい人も不機嫌な人も寛容な人も近寄り難い人も喪失を抱え、それでもまた何かに辿りつく。やや説明過多の嫌いはあるけれど、真心に救われる。

 風変わりではあるものの、実はこれほど端的に映画を表したタイトルはない。確かにそれはうるさい。でも極めて身近なところにある。少年は身を持ってそれを知る。ダルドリーは細心の注意と懐深い慈しみを具えた眼差しで見つめている。





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