アニマル・キングダム

アニマル・キングダム “Animal Kingdom”

監督:デヴィッド・ミショッド

出演:ジェームズ・フレッシュヴィル、ベン・メンデルソーン、
   ジョエル・エドガートン、ガイ・ピアース、ルーク・フォード、
   ジャッキー・ウィーヴァー、サリヴァン・ステイプルトン

評価:★★★★




 その王国は決して大きくはない。しかし、それを形成する危険分子には注意が必要だ。外観は鋭利だ。邪悪な空気が白い顔のまま濃厚に立ち込めている。デヴィッド・ミショッド監督は、その細部を念入りに観察する。するとどうだ。物語が異様な緊張に支配されていくではないか。

 『アニマル・キングダム』の舞台となるのはメルボルンの犯罪ファミリーだ。老いた母と三人の兄弟。そこに家族ぐるみの付き合いをしている仲間の一人が入り浸っている。母親をヘロイン中毒で亡くしたばかりの少年は、そこに放り込まれる。一見愛し合っている普通の家族。しかしその実態はと言うと、強盗や麻薬の密売等の凶悪犯罪により生計を立てている。日常の異常が、シラッと当たり前のこととして描き出されていくのが面白い。

 少年は家族の異常を眺めることしかできない。まだ未完成の器は、降り注ぐ情報を取りこぼさないようにするのに精一杯だ。したがって彼は傍観者となる。長男は報復活動に忙しい。次男は身を守るための武装に走る。三男は何をしたら良いのか瞬時には判断できない。家族と警察の対立構造が深まるに連れて、画面はますますあくどく灰色がかっていく。表の顔と裏の顔が一体化していく。ひとつの亀裂をきっかけに、王国は脆く崩れ始める。ここにある種のカタルシスがある。

 少年は家族と警察、どちらにつくべきだろうか。その決断が人生を左右する。関わる人のそれまでもが影響を受ける。その謎が細く、しかし頑丈に物語を貫く。生きるということ、生き延びるということ、当然の価値観が揺さぶりをかけられる。傍観者でしかないはずの少年はしかし、いつしか家族の王国の中でしか生き辛い身体に変化しているではないか。ここが急所だ。サスペンスをグッと盛り上げる。

 王国の崩壊が始まる。一気に崩れ去るかと思いきや、ところが、それが食い止められる。王国はしぶとい。ここでせり出してくるのが老母だ。息子たちの蛮行を眺めているだけのようで、実は彼らを育て上げたのは彼女だという事実が、不敵な笑みと共に浮上する愉快さよ。演じるジャッキー・ウィーヴァーが素晴らしい。身体は小さい。声は細く可愛らしい。しかし、その眼光には王国を守るためには何でもやってのける覚悟が見える。額に深く刻まれたシワが、息子たちへの汚れない愛情が、女王の本気を物語る。王国は盛り返す。少年はそれを見逃さない。ただし、その老母もまた人間という生き物の複雑な心理だけは理解し切れていないとする展開が巧い。

 少年を演じるジェームズ・フレッシュヴィルの肉体に注目したい。身体は大きい。三兄弟と並んでも何ら遜色ない。しかし、そこには逞しい筋肉がない。人生を切り抜けていく筋肉がない。つまり彼は、青春の真っ只中にいる。フレッシュヴィルの身体は最も多感なこの時期に、危険な王国で息をすることを余儀なくされる。そうして彼は筋肉を身につけていくのだ。ものにした筋肉が普通のそれと違うのは当然だ。フレッシュヴィルの肉体はそれを説得力あるものとして見せていると思う。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ