ザ・ウォーカー

ザ・ウォーカー “The Book of Eli”

監督:アレン・ヒューズ、アルバート・ヒューズ

出演:デンゼル・ワシントン、ゲイリー・オールドマン、ミラ・クニス、
   レイ・スティーヴンソン、ジェニファー・ビールス、マイケル・ガンボン、
   フランシス・デ・ラ・トゥーア、トム・ウェイツ、マルコム・マクドウェル

評価:★★




 最初にオヤッと思ったのは、なぜか座頭市を連想させる主人公のデンゼル・ワシントンが殺陣を披露する場面だ。荒野に現れた荒くれ者たちを、刃にいくつかの穴が開いた短剣を使って、次々に斬っていく。所謂掴みの場面になるのだけれど、これがなんだかカッコ良くないのだ。入念な振り付けの下、しかも影絵風の魅せ方になっていて、スタイリッシュな画にこだわった工夫は感じられるのだけれど、それが視神経を刺激しない。殺陣をこなすなら日本人を見習ってはどうかと見当違いの言葉がつい出そうになる。

 この最初の違和感が徐々に大きくなっていき、ようやく大きな問題が見えてくる。『ザ・ウォーカー』の映像は多分、綺麗過ぎるのだ。

 荒れ果てた大地に成り果てている近未来(核戦争が起こったことが示唆される)、水が何よりも貴重で、人は生きることにただ必死になっている。ワシントンはその世界の中、一冊の本を持って、ただひたすらに西に歩き続ける。この世界観を表現するのに、アレン・ヒューズとアルバート・ヒューズはこれまでに見たことのないような映像の色味で勝負している。一見セピア風なのだけれど、場面ごとにその色合いは微妙に変わっていく。黄色が強調されたり、赤が前面に出たり、青っぽくもなったり。場面毎の意味を酌んだ色味の変化が、イチイチ美しい。いや、美し過ぎる。

 銃弾は激しく乱射され、無駄に殺生が重ねられていく。それなのに、あぁ、なんと上品なのだろう。ワシントンは30年間も歩き続けていて、衣服はボロボロ。戦う度に泥が舞い上がり、血が流れ、時には爆発も起こる。それにも関わらず、ここには生きている匂いがしない。あまりに画面が綺麗にキマッているために、どこまでも現実感がなく、寓話以上の飛躍が拒否されている。最も力を入れたはずの映像が煩くて、かえって小さな空間に物語を閉じ込めてしまった印象が強い。荒野の一軒家での銃撃戦における長回しなど、個々を取り出せば面白い場面も少なくないというのに。頑固な美意識も考え物だ。

 ワシントンが主演ということも関係があるのかもしれない。アメリカの良心的存在ゆえ、スカシの中に人の好さが透けて見える。残酷に振る舞っても、本当の姿は隠せない。誠実さと共に荒々しいものが全身から吐き出されんばかりの演技が要求される役柄だろう。ただ、ワシントンの佇まいはミラ・クニスに接する場面では大いに有効だ。作品のテーマのひとつである文明や教養、知性といったものが、品のある所作の中に浮かび上がっている。後半前面に出てくる信仰についても、なるほどワシントンを主人公に置くことで説得力のあるものになった感。

 物語と関係ないところで嬉しくなったのはジェニファー・ビールスの登場だ。ワシントンとビールスというと、佳作「青いドレスの女」(95年)を思い出す。15年が経ち、ビールスはあの頃の妖気を失ってしまったけれど、それでもお馴染みの演技を披露する(だけの)ゲイリー・オールドマンの情婦役にピッタリだった。





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