リセット

リセット “Bringing Up Bobby”

監督:ファムケ・ヤンセン

出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、ビル・プルマン、マーシア・クロス、
   ロリー・コクレーン、スペンサー・リスト、ジャスティン・ホール

評価:★★




 ミラ・ジョヴォヴィッチは悪女役が似合う。それも悪意のない悪をまとった悪女役が似合う。深い情念に雁字搦めになった頭のキレる悪女ではなく、動物的本能にしたがって悪事を重ねる女。無邪気な土台に一滴の悪が落とされたような印象。たとえ犯罪に手を染めても、どこかチャーミングだ。

 ジョヴォヴィッチが『リセット』で演じるのは、まさしくそういうタイプの女だ。天真爛漫な笑顔を振り撒きながら、あっけらかんと詐欺行為を働く。ウクライナから夢を求めてアメリカへやって来て、男と情熱的な恋に落ち、息子を産み、しかしその直後に男に捨てられ、いつしか生きていくために悪事に染まってしまった女。その犯罪行為に後ろめたさはない。ジョヴォヴィッチは悪意のない悪を巧みに操る。臭い芝居が素晴らしい。

 どうしてそんなに洋服持ちなんだと呆れるほどに、衣装をとっかえひっかえするのが楽しい。その日暮らしのはずなのに、そのスタイルは極めてファッショナブルだ。それもダークカラーは敢えて避けられている。明るい色のヴァリエーションで勝負、その様は眺めているだけで気分が良い。中でもビル・プルマン扮する実業家のオフィスを訪ねるときがベストか。トップが赤で、下が白。トップは白のドットが入っているのが可愛い。唇の色も腕時計も花飾りも赤で揃えられているのがスマートだ。出所場面の往年のクラシックスター風着こなしもカッコイイったらない。

 ジョヴォヴィッチが輝いているのはファムケ・ヤンセンが監督しているからかもしれない。こういう言われ方は不本意だろうけれど、女性ならではのキメ細やかさは確かに感じられる。美しい撮り方、撮られ方を知っている女優ならではの肖像になっていると思う。おそらくヤンセンは、犯罪行為に走っても、それでもヒロインが輝いて見えるように気を遣っている。

 女性らしい視線を感じるのは「母性」の見つめ方だ。ジョヴォヴィッチが逮捕される前と後では、同じ映画かと首を捻るほどにトーンが異なるところに違和感があるのだけれど、それでも嫌な印象が湧き上がってこないのは、「母性」を絶対的なものとは捉えていないからだ。母が息子を愛する気持ち、息子が母を愛する気持ちに嘘偽りはないとしながらも、でもそれが彼らのためになるとは限らない。時に冷徹な判断を下す必要があると見ている。図々しいまでに母性に寄り掛かった「キッズ・オールライト」(10年)なんかとは全然違う。

 尤も、語り口にはもっと工夫があってしかるべきだろう。ジョヴォヴィッチが突如真っ当な人間になろうとするのは強引だし、11歳にもなって息子の善悪の基準が狂っているのも(育てられ方を考慮しても)無理がある。息子の養父母となる夫婦の善意が都合良く扱われている感も拭えない。

 そうそう、映画ネタはなかなか楽しかった。「風と共に去りぬ」(39年)や「カサブランカ」(42年)といった有名映画のセリフが出てくる。原題の「Bringing Up Bobby」は「赤ちゃん教育(Bringing Up Baby)」(38年)から来ているのだろう。ヤンセンはかなりの映画ファンと見た。それから養母役でマーシア・クロスが出てきたのもちょっと嬉しかった。ほとんど「デスパレートな妻たち」(04年~)のブリーそのまんま。ただ、ブリーのときよりも人間っぽい。少々やつれた感じが悪くなかった。





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