マザーズデイ

マザーズデイ “Mother's Day”

監督:ダーレン・リン・バウズマン

出演:レベッカ・デモーネイ、ジェイミー・キング、ブリアナ・エヴィガン、
   パトリック・フリューガー、デボラ・アン・ウォール、マット・オリアリー、
   ジェシー・ルス、ショーン・アシュモア、リサ・マルコス、
   フランク・グリロ、トニー・ナッポ、ウォーレン・コール、リリク・ベント、
   キャンディス・マクルーア、A・J・クック、アレクサ・ヴェガ

評価:★★★




 デモーネイが帰ってきた。「ゆりかごを揺らす手」(91年)のレベッカ・デモーネイが帰ってきた。最近は目立たない助演が続いていたデモーネイだけれど、『マザーズデイ』では堂々の主演。それも当たり役である「ゆりかごを揺らす手」のペイトンを思わせるサイコな役柄での登場だ。冷たいブルーの瞳に狂気を滲ませ、息子や娘を統率する鬼母として画面を凍りつかせる。そう来なくてはと膝を打つ。

 一見幸せそうな夫婦が開いた引越しパーティに友人・知人が集まる。そこに現れるのは一人が瀕死の重傷を負っている強盗三兄弟。兄弟は家の者たちを監禁し、そこに届けられていたはずの現金のありかを探し始める。日常が突如陰惨なものとなる光景は、実は映画ではさほど珍しいものではない。ホラー映画なら日常茶飯事とも言える。ところがそこにひとりの女が姿を見せることで、空気が明らかに変わる。言うまでもなく、デモーネイだ。

 デモーネイ登場場面には「待ってました!」と声をかけたくなる。デモーネイは強盗ファミリーの家長であり、兄弟に強盗技術を仕込んだのも彼女だ。デモーネイはミスを犯した息子たちの後始末のためにやってきたのだ。デモーネイは丁寧な言葉遣いだ。デモーネイは声を荒げない。デモーネイは取り乱すこともない。つまり外見は普通だ。ところが、これが怖い。穏やかな表情を浮かべたままに、目が、頬が、声が狂気の色を帯びる。ほとんど女王の匂いを放ち始める。このときの画面の冷たさはデモーネイ特有のものだ。毛穴の中に入り込んでくるような冷気で、徐々に監禁された者たちの動きを封じ込めていく。

 デモーネイの狂気の奥底には子どもたちへの歪んだ愛情が敷かれている。歪みを恐怖へと変換させるのが、デモーネイの技の見せ所だ。言葉巧みに子どもたちを悪事に走らせ、しかしその窮地には決して危険を恐れない。今にも死にそうな三男が「童貞のまま死にたくない」と泣き叫ぶと、監禁した女の中から一人を調達、目の前でセックスさせようとする件など、あまりにもシラッとやってのけるので笑ってしまうほどだ。

 監督のダーレン・リン・バウズマンは「ソウ」シリーズで三作を手掛けた人物で、その影響があちらこちらで見られる。描写は残酷に、痛みを重視して、不条理な状況を嬉々として作り出す。頭が吹っ飛んでしまう場面や顔中に釘が刺さる場面、ビリヤードの球で手の甲が潰れる場面…。生き残るために被害者たちに難しい選択を迫るというのも「ソウ」シリーズの匂いがちらつく。滑稽さに足を突っ込んでいる。

 デモーネイが作り出した暗く冷たい空間が崩れていく過程は、ありきたりなものになってしまった。犯人側が愚かなミスを犯し、被害者側が当然のように反撃に出る。突破口が脆くてチープだ。女王デモーネイの王国を崩すに相応しい知恵が欲しかった。

 ところでこの映画、犯人側に肩入れしてしまうところに面白さがある。デモーネイが主演しているためというのもあるけれど、より大きな理由は犯人側の家族愛が、歪んでいるとは言え、無垢なものを感じるからだ。親が子を愛し、子が親を愛す。それに汚れがない。被害者側はというと、監禁過程で人間の醜さを露にしてくばかりだ。そう言えば、「ゆりかごを揺らす手」の恐怖の底にも母の愛が敷かれていた。デモーネイは愛あるサイコということなのかもしれない。





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