突然、みんなが恋しくて

突然、みんなが恋しくて “Et soudain tout le monde me manque”

監督:ジェニファー・デヴォルデール

出演:メラニー・ロラン、ミシェル・ブラン、ギョーム・グイ、
   フロランス・ロワレ=カイユ、クロード・ペロン、
   マニュ・パイェット、ジェラルディン・ナカシュ

評価:★★




 フンラス映画『突然、みんなが恋しくて』は、とにかく父親の描写が強烈な印象を残す。赤の他人はもちろん、知り合いや友人、娘や嫁にすらも、気遣いを見せない男として登場する。彼なりの愛情がないわけではない。ただ、その見せ方が異様に不器用で、その明け透けな言動により、相手を怒らせてばかりだ。無責任の自覚がない。子どもでもしない悪戯を仕掛ける。老いを受け入れない。立ち小便しながら隣の男のブツを覗き込む。妊娠に喜ぶ嫁に何の脈略もなく中絶を勧める。

 父親を見て、ある人物を思い出す。ウッディ・アレンだ。他人の迷惑顧みず、ひたすら喋り続けるあたりがアレンを思わせる。アレンではやらないような言動ばかりではあるものの、ブツクサ文句を言いながら歩き回っている姿に、アレンの姿が見える。彼は一向に改心しない。懲りることがない。オマケにユダヤ人だ。ミシェル・ブランも作り手も多少なりともアレンを意識している気がする。

 アレン映画だと主人公はどれだけ他人様に迷惑をかけても憎めないところがある。ここでも作り手は同じことを試みる。ただ、前述のような振る舞いだけにより成り立っているようなこの父親を、愛敬があると言い包めるのはさすがに苦しい。迷惑な男だと呆れることはあっても、見方にはよっては楽しいかも…なんて寛容な気分を誘うのは無理だ。フランスならではの皮肉めいた匂いがそれを許さない。それでも、軽妙さを最大限に引き出す、ブランの妙演に救われる。

 娘を演じるメラニー・ロランは放射線クリニックで働いているという設定。彼女はそこにある機材を使って撮ったX線写真によるアートギャラリーを作るのが趣味。これが凡人には理解不能は芸術というヤツで、しかしそれが案外話に豪快に入り込んでくるところに困惑する。変態臭を愉快に見せるほどの技がない。尤も、ロランは相変わらず美しい。ほとんどの場面で表情変化が見られない。笑うのは時たま、涙は一切流さない。良い意味でドライな感じがロランに合っている。アレン映画に出てきそうな雰囲気もある。

 物語はブランとロランを中心にその周辺人物の日常をアンサンブルで見せていく。序盤は役者の好演も手伝って、シュールな面白さがあるのだけれど、終幕にはおかしな方向に向かってしまう。奇妙な人物スケッチ風だったタッチが突然、家族問題とそれにまつわる感傷へと流れるのだ。根深いところにあった父と娘の溝に探りが入れられ、良い話にまとめられる。その割りに、ロランの姉夫婦の養子絡みの話は放り出されたまま回収されない。

 ただ、ある人物の葬式場面には不思議な面白さが感じられる。父親はどういうわけだか、ロランの別れた恋人たちと友好関係を続行していて、その彼らが一堂に会するのだ。非現実的な光景が可笑しい。作り手はひょっとしてこの画を撮りたかったのではないか。それならば話の中にもっと組み込む方が面白かっただろう。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ