ボーダー

ボーダー “Righteous Kill”

監督:ジョン・アヴネット

出演:ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、カーティス・ジャクソン、
   カーラ・グギノ、ジョン・レグイザモ、ドニー・ウォルバーグ、
   トリルビー・グローヴァー、ブライアン・デネヒー、メリッサ・レオ

評価:★




 ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノのような生きる伝説と言うべき大スターを共演させるなら、それに見合った優れた脚本が必要だ。骨格が脆いと、彼らのスケールを支えることができず、ほんの数分で作品が土台の部分から崩れ落ちてしまう。『ボーダー』はまさしくそれにピタリ当てハマる映画で、MTV風のカット割りで始まるオープニングからその底の浅さが明け透けになるまでがアッという間。なぜデ・ニーロやパチーノが出ているのだろうという疑問ばかりを刺激する。共演らしい共演がなかった「ヒート」(95年)は、少なくともこのふたりに見合った題材だったと懐かしく思い出す。

 いきなりデ・ニーロの独白から始まるストーリーと意味深な演出が、兎にも角にも全く噛み合っていないのが大問題だ。カメラを睨みつけるようにして堂々と犯罪を告白するデ・ニーロ刑事。彼は自分が犯罪者ばかりを狙った連続殺人の犯人であることを宣言しているのだ。いきなり犯人を明かしてしまうとは、法を潜り抜けてのうのうと暮らしている犯罪者たちへの葛藤や善悪のグレイの部分を抉り出す濃厚なドラマでも動き出すのかと思いきや、どっこいそんな高尚な展開にはならない。なにしろデ・ニーロの独白に基づく犯人殺害場面になると、犠牲者の姿ばかりが映し出され、犯人の姿は影すら映りやしない。その間、相棒のパチーノ刑事は何をしているかと言うと、冷静沈着にコトのなりゆきを見守るばかりだ。当然映し出されるものをそのまま受け取ることなどできず、となると真犯人はどうしたってあの人物だろう。あまりにも見え見えの展開に驚く。妙に品のないセリフが多いのにはギョッとする。

 しかも、これでクライマックスまで引っ張るのだ。作り手はミスリードを巧くこなしているつもりらしいけれど、それゆえ余計に愚かさが前面に出る結果に。少なくとも殺害場面の魅せ方をもう少し工夫するべきだろう。いや、ひょっとすると殺害場面そのものを一切見せない方がまだ話にノレた気がする。なお、真犯人の犯行は回を重ねる毎に雑になっていく。ある女性が襲われる件など、必然性が一切ない。途中で物語を投げ出しているみたい。

 せめてクライマックスぐらいはカッコ良くキメて欲しかった。繰り返すけれど、デ・ニーロとパチーノの貴重な共演なのだ。それなりの重みというものが欲しいところなのに、犯人の動機がバカバカしいばかりか、自分で首を絞めておきながらこの期に及んで浅ましくジタバタするあたり、本当にヘボだ。稀に見る愚かな犯人である。

 当然のことながら、話が脆弱なので、デ・ニーロもパチーノも精彩を欠く。経歴を知らなかったら、彼らが名優だとは気づかないかもしれない。でもまあ、作品だけのせいにしてしまうのも酷か。デ・ニーロは近年あのデ・ニーロスマイルを安売りしたセルフパロディ演技ばかりだし、パチーノは目に力を入れた激情演技を決してやめようとしない。老いてますます魅力を増していくスターは少なくないけれど、彼らは違うのか。この失敗を吹き飛ばす名演を見られるのはいつの日か。





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