家族の庭

家族の庭 “Another Year”

監督:マイク・リー

出演:ジム・ブロードベント、ルース・シーン、レスリー・マンヴィル、
   ピーター・ワイト、オリヴァー・モルトマン、デヴィッド・ブラッドリー、
   カリーナ・フェルナンデス、マーティン・サヴェッジ、
   ミシェル・オースティン、フィル・デイヴィス、
   スチュワート・マッカリー、イメルダ・スタウントン

評価:★★★




 マイク・リーの脚本には所謂捻りというものはない。複雑な構成ではないし、思いがけないどんでん返しもない。ただ、普通の人々の普通の生活風景を映し出すだけだ。それなのにやけに面白い。強く心に残る。それは結局、そうして炙り出される生きるおかしみや辛さに迫力があるからだと思う。ささやかだけれど迫力がある。しみじみと迫力がある。さり気なく迫力がある。

 『家族の庭』でもリーの映画への向き合い方は変わらない。地質学者の夫と心理カウンセラーの妻。若くないふたりと彼らの家に集まってくる人々の一年が、静かに織り上げられていく。派手な出来事はない。続くのは贅沢さとは無縁の家で交わされる近況報告、何気ない掛け合いだけだ。

 そこで飛び交う言葉は、素朴だけれど、味わいは単純ではない。夫婦の息子を除いて若い人は見当たらない。会話は必然的に老いに絡めたものになる。誰もが若さを願い、しかし必ず老いていく。ある者はそれを受け入れ、ある者は必死に抵抗する。ここに強烈な孤独というものの気配が立ち上がってくる。急所だ。

 人生は優しくないと妻は言う。その現実が容赦なく突きつけられる。誰もが命を与えられるという点においては平等で、でも人生にそれは当てはまらない。だから負の感情もまた露にされる。リーはそれを掬い取るのが巧い。残酷なまでに巧い。

 象徴的に描かれるのは妻の同僚であるメアリーだ。結婚に失敗し、本気で愛した不倫相手には捨てられ、気がつけば老いが気になる年齢だ。その上今は、友人夫婦の息子が気にかかっている。その孤独の表情が可笑しくて、哀しくて、切なくて、生々しくて…。レスリー・マンヴィルの達者な演技がそれを一層ヒリヒリとしたものにさせる。

 リーはメアリーを始めとする人生にもがいている者たちに決して手を差し伸べない。ただ眺めているだけだ。中心となる夫婦にしても、家にやってくる者たちを受け入れることはしても、決してその問題に深く関わろうとはしない。むしろやんわりと突き放す。笑いながら突き放す。この冷徹ですらある眼差しが、家族の肖像のコクを深いものにしている。近くて遠い他人との距離が鋭く指摘される。

 バランス感覚には欠けているかもしれない。メアリーの印象が強く、その他の人物が霞んでしまった嫌いはある。ただ、それでもまだ、リーの人生観に感じ入るところは多い。そう言えば、ここまで直接的に人生を描いたリー映画も珍しいかもしれない。老いることや孤独、そして幸せについてふと考える。





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