ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~

ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~ “Goethe!”

監督:フィリップ・シュテルツェル

出演:アレクサンダー・フェーリング、ミリアム・シュタイン、
   モーリッツ・ブライプトロイ、ヘンリー・ヒュプヒェン、
   ブルクハルト・クラウスナー、フォルカー・ブルッフ、
   ハンス・マイケル・レバーグ

評価:★★




 歴史に名を残す数百年も前の作家が主人公と聞くと、どうしても身構える。難解な言葉ばかりを選ぶ、小難しい人物ではないか。その作品を振りかざせば、人から見直されてしまうほどに立派な人格者ではないか。その思考は頭でっかちなそれで占められているのではないか。ひょっとすると宇宙人なのではないか。

 だから『ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~』には驚く。とにかく主人公が軽い。彼はドイツを代表する文豪ヨハン・ウォルフガング・フォン・ゲーテ。1772年、23歳のとき。まだ詩人としても小説家としても頭角を現していない。お喋りで、酒好きで、女好きで…簡単に言えばお調子者だ。夢と希望だけを信じて、しかし普段は特に努力をすることもなく、のんびりだらりん。

 史実かどうかはさておき、問題はこれを親近感があるとして言い包めようとしているところだ。ここでのゲーテはそこいらでテキトーに生きている兄ちゃんと何ら変わりない。友人とつるみ、女の尻を追いかけ、勉学や仕事もそこそここなす。今が楽しけりゃそれでいいじゃないか。後に巨大な文豪になるものの、その彼も若い頃は普通だったのだ。俺たちと変わらなかったのだ。毎日を笑って泣いて過ごしていたのだ。そう言いたいのかもしれない。もっと深読みするなら、若い頃は軽くても、まだまだ未来には可能性があると信じたいのかもしれない。あぁ、なんとチープな親近感。

 しかし、そうするとこの話は、ゲーテが主人公である必要性が極めて薄くなる。ここでのゲーテは普通の青年が普通にやっていることをしているに過ぎないからだ。そしてそれは恋愛においても同様だ。カラス頭の女にアルコールをぶちまけられ、しかし恋に落ち、自分からなかなか愛を告白できなくて、それでもやっぱり想いは止められず、互いの思いを確認するやいなや、美しい景色の中でセックスに雪崩れ込む。作り手としては「若きウェルテルの悩み」の誕生の裏ではこんなことがあったと紹介しているつもりなのだろうけれど、やることなすことあまりに平凡で、まるで心にフックするところがないのはどうか。せっかくの処女作は単なる小道具で終わっている。

 見せ方もロマンティックというよりも自己陶酔臭が強い。笑わせ方はと言うと、ほとんどコント的。男と女が惹かれ合っていく過程にも磁力はない。文豪ゲーテの始めの一歩を決定づける運命的な激しさがないと、説得力がないというものだろう。昔ながらの結婚問題や若い男女の初々しさだけでは画面をモタせられない。

 ゲーテを演じるアレクサンダー・フェーリングは確かに美しい容姿をしているものの、パンチには欠ける。ブノワ・マジメル、アーミー・ハマー、そして横山裕をミックスして割ったような印象。その演技には自分が美しいことを自覚していることが透けて見える。ゲーテが涙を流す場面は、おそらくフェーリングの見せ場だ。ただ、ほとんど胸に迫るものはない。嫌味がないのは有難いけれど…。

 それよりも見ものなのはフェーリングの上司にして恋のライヴァルとなる法律家を演じるモーリッツ・ブライプトロイだ。もはや若手とは呼べなくなったブライプトロイが、大芝居ではなく、小技を連ねて場をさらう。これみよがしにいやらしさを出すのではなく、さりげなく仕草に滑り込ませるのが愉快。眺めの良い役者になったものだ。

 ところで、どうしてゲーテの友人は途中退場する必要があったのだろう。史実ということなのだろうか。恋に破れる絶望を見せたかったのだろうか。後を引く流れで、最後まで気になって気になって…。





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