ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル

ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル “Mission: Impossible - Ghost Protocol”

監督:ブラッド・バード

出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、ポーラ・パットン、
   サイモン・ペッグ、ミカエル・ニクヴィスト、ウラジミール・マシコフ、
   ジョシュ・ホロウェイ、アニル・カプール、エラ・セドゥー、
   トム・ウィルキンソン、ヴィング・ライムス、ミシェル・モナハン

評価:★★★★




 「ミッション:インポッシブル」(96年)の愉快な力みがある。「M:I-2」(00年)の重量感がある。「M:i:III」(06年)の的確なスピードがある。要するに『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』は面白い。これまでのシリーズの良かったところをたっぷりと盛り込んで、これぞハリウッドアクションと言うべき、爽快さをまとっている。

 そもそもトム・クルーズ登場場面からして面白い。ロシアの刑務所のベッドに座る男の後ろ姿が見える。顔は分からない。刑務所で騒動が起こる。どうやら諜報員がシステムに侵入、刑務所を操っている。するとベッドに座っていた男の部屋の鍵が開く。男は驚きもせずに立ち上がり、そして部屋を出て行く。このときもなかなか顔が見えない。セリフも一切ない。そう、これだけタメてタメてようやく横顔が見えるのが、クルーズだ。ビッグスター登場の掛け声がかかる。クルーズはある人物を助け出し、混乱する刑務所を突っ切り、脱出を成功させる。たったこれだけの見せ方が、非常に巧い。プロが入り込んでいることが分かる滑らかな遠隔操作。混乱が混乱を呼び込んでいく流れ。そこを主人公が弾丸のように突破していく痛快さ。撮影と編集の見事な呼吸。柔らかく処理された音。遂に脱出が完成すると、例のあのテーマ音楽が流れ出すのもスマートだ。タイトルクレジット中に、導火線を追っていくのも、物語が始まる興奮を刺激する。

 手掛けたのは、なんとあのブラッド・バードだ。ピクサーアニメーションで実績を積み上げてきたバードが、実写映画に初挑戦、見事勝負に勝利している。バードが最も優れていているのは、刑務所脱出場面でもそうなのだけど、空間の捉え方極めて鋭い点だと思う。窮屈な場所であれ、広々とした場所であれ、カメラの主張を忘れない。主張を忘れないというのは、動きに制限をかけないということだ。狭ければ窮屈な隙間を見つけ、広ければ最も効果的な場所を探る。登場人物のどこを映せば画面が派手になるか、活気づくか、冷静さを取り戻すかを知り抜いている。

 とりわけ縦の動きが素晴らしい。ドバイの超高層ビル場面は言うまでもなく、パーティが開かれるホテルや立体駐車場でも縦の空間が大いに意識されている。構図を大切にするというより、構図を突き破りながらアクションを畳み掛けていく。上から下へ、下から上へ、時には斜めに突き破る。横の空間だけではゲーム風に終わってしまう危険があるところを鮮やかに切り抜けていく。下から風が吹き上げてくるような、上から磁力で引っ張られているような、不思議な快感が縦の空間から生み出されている。アクションがこれだから、めまぐるしさの中に湧き上がる興奮がゴージャスだ。

 出てくるスパイグッズのセンスも絶妙。幕に映像を投影するマシーン。虹彩認証。風船に装着したカメラ。ラジコンで動く機器。ニセモノの義手。ハイテク時代を反映させながら、同時にレトロでもあるというセンが狙われていて、これが古くて新しい味を添えている。最も楽しいのは超高層ビルで活躍する吸着手袋だろう。地上から800メートルの窓に張りつく吸着手袋が綱の代わりとなる。手袋の色が青ならばしっかり機能を発揮するも、赤になると途端にただの手袋となる。単純明快なアイテムがサスペンスを目一杯盛り上げる。

 ミッションはもちろんクルーズがいなければ成立しない。バードはこれまでさほど重要視されてこなかったチームプレイを大切にしている。メカ担当のサイモン・ペッグ、武道派のポーラ・パットン、秘密を隠し持つジェレミー・レナー。彼らにも見せ場を容易、それぞれに輝き、しかしそれゆえにクルーズの活躍を引き立てる。確かに老けはしたものの、まだまだ身体が動くクルーズが画面に豪快な蹴りを入れる。お馴染みのあの走り方を見れば、誰もがクルーズ健在を認めざるを得ないだろう。指をピンと伸ばし、肘を90度に曲げ、腕を大きく振りながら、街中を全力疾走する。素晴らしい迫力だ。そして素晴らしく可笑しい。超高層ビルでのアクションも、力みと重量感、そしてスピードをモノにしたそれで、ほとんど感動的。高所の迫力に呑まれない。ハリウッドに実力派はたくさんいるけれど、それでもクルーズの代わりは誰にもできないだろう。

 バードはクルーズの魅力を本能的に分かっているのだろう。ユーモアもふんだんに出てくる。ペッグのように分かりやすいユーモアだけでなく、懸命さから滲み出る、動物的なユーモア感覚が至るところに散りばめられている。会話場面に出てくるのではなく、アクション場面に挿入されるのが見事だ。タイミングに優れている。クルーズの資質とも合致している。

 間違いなくシリーズ最高傑作だろう。どこかで見たような聞いたような話でも、鋭利なアイデアとそれに見合った演出がアクション映画の醍醐味を存分に引き出す。ハリウッドでなければならない映画とはこういうものだ。





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