クリスマスのその夜に

クリスマスのその夜に “Hjem til jul”

監督:ベント・ハーメル

出演:トロンド・ファウサ・アウルヴォーグ、
   クリスティーネ・ルイ・シュレッテバッケン、
    トネフリチョフ・ソーハイム、セシル・モスリ、
   サラ・ビントゥ・サコール、モッテン・イルセン・リースネス、
   ニーナ・アンドレセン=ボールド、トマス・ノールシュトローム、
   ライダル・ソーレンセン、イングン・ベアテ・オイエン

評価:★★★




 クリスマスの夜、ノルウェーの小さな田舎町に住む人々の数時間が切り取られる。主役はいない。出てくる人々それぞれの息遣いが大切にされたアンサンブル形式になっている。ロンドンを舞台にした「ラブ・アクチュアリー」(03年)と一体全体どこが違うのだろうと思う。イギリスとノルウェーという違いとは決定的に異なる何かがある。

 簡単に言ってしまえば、話の底に人生を感じさせるかどうかだろう。「ラブ・アクチュアリー」で描かれるクリスマスは、言わば消費社会が創り上げたクリスマスだ。別にそれが悪いわけではない。それもまた今を映し出したクリスマスなのだから。ただ、それを何の疑いも持たないまま受け入れ、快楽の追求に走るのは、映画の作法としてちょっとどうか。はしたなさを感じるところの方が圧倒的に多い。

 『クリスマスのその夜に』には華やかなクリスマスなど出てこない。意識の差こそあれ、クリスマスに浮かれている者はおらず、むしろ毎日の暮らしの中でこびりついた、生きていく孤独から逃れられない。クリスマスだからと言って、特別は奇跡は起こらず、むしろその陰を深めていく。

 しかし、ここが重要なのだけど、孤独を知っているからこそのささやかな喜びに彼らは気づく。虚しさにも気づくけれど、それもまた尊い感情だ。ベント・ハーメルはその細部を掬い上げる。登場人物に近づき過ぎることのないまま、一定の距離を保った状態で、その数時間に寄り添う。自らクリスマスの空気になったかのように寄り添う。

 ハーメルの距離感は暮らしに潜む問題の輪郭を朧気に見せることになる。移民。ホームレス。強盗。不法侵入。暴行。ナイフ。社会問題や犯罪が浮上する。それでもクリスマスは平等だ。

 美男美女は出てこない。群像劇でありながら、その登場人物間の繋がりはさほど意識されない。それゆえもどかしく感じられるところは確かにある。しかし、彼らは結局結ばれている。それはもう、クリスマスの精神というヤツが包み込んでいるからだろう。クリスマスの精神が何かは書かない。書いた途端に消えてなくなってしまいそうだから。ハーメルも同じことを考えたのか、じっくり突き詰めるのではなく、一瞥に留めている。その塩梅が結構。

 クライマックスにオーロラを見せる演出はやめて欲しかった。ここだけ妙に浮き上がっている。安易にクリスマスの奇跡を見せているようで、アッという間に現実世界に引き戻されてしまった。





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