リアル・スティール

リアル・スティール “Real Steel”

監督:ショーン・レヴィ

出演:ヒュー・ジャックマン、エヴァンジェリン・リリー、ダコタ・ゴヨ、
   アンソニー・マッキー、ケヴィン・デュランド、カール・ユーン、
   オルガ・フォンダ、ホープ・デイヴィス

評価:★★★




 遠くない未来では、生身の人間同士がぶつかり合うボクシングは廃れている。代わりに人気が盛り上がっているのはロボット・ボクシングだ。ロボットがリンク上で拳を繰り出すというのだ。なんと味気ないスポーツだろう。人間がより暴力的なものを望んだ結果ということらしいけれど、痛みの伴わない格闘の、何がそんなに面白いのか。ロボットの所有者たちはリングサイドでロボットに指令を出すばかりだ。それなのに…。

 それなのに『リアル・スティール』は面白い。いちばんの見せ場がロボット・ボクシングにあるのは間違いない。退屈な設定のはずなのに、むしろ大いに盛り上げる。クライマックスの大試合に至るまでの仕込みが、一部を除いて入念だからだ。ハリウッドならではの魔法がウェルメイドに塗されている。

 大試合は主人公の元ボクサーの人生を集約している。もう少しでチャンピオンになれるというところまで行きながら夢破れ、それどころかボクシング人気の下降と共に、人生まで下り坂に入ってしまった男。別れた恋人との間にできた子どもとも疎遠のまま今に至る。その彼が息子との再会をきっかけに再生の道を歩み始める。息子と、彼が見つけたボロロボットと共に希望の道を見つけていく。機能的には古臭く、最新技術が投入されたチャンピオンロボットには到底勝てそうにないボロロボットが見せる、不屈の闘志が元ボクサーの人生に重なる。

 ここに調味料として、父と息子のドラマがふりかけられる。ほとんど初対面に等しいふたりが、反発し合いながら徐々に距離を縮めていくという、定番中の定番。ありきたりな関係がしかし、ロボットを媒介することにより、熱を帯び始める。息子が父に目を向ける。全く知らなかった父の姿に涙する。

 ボロロボットにシャドー機能なるものが取り付けられているのが非常に巧い。人間の動きをコピーするという機能。ボロロボットは元ボクサーである父の動きを真似ることで特訓を重ね、クライマックスでも父がリングサイドでアクションを見せることで強敵相手に善戦していくのだ。つまり動かないと思われた、生身の人間の身体が動いている。父が知恵と肉体を使って動きを指令し、ロボットがそれに忠実に応える。そして息子はそんな父の姿を見て、見たかったのに見ることが叶わなかった父の勇姿を見る。それはもちろん、勝利よりも価値のあることだ。シャドー機能は他にも、画面にユーモアや愛らしさを注ぎ込んむ効果を上げている。息子と一緒にダンスする場面が微笑ましい。

 主人公が操縦するロボットは全部で3台登場する。いずれも描き分けがしっかりなされている。一台目はブリキのようなレトロ風味が良い味わい。二台目はピカピカのボディがトランスフォーマー風なのがイマイチ気に喰わないものの、「超悪男子」と漢字で書かれているのが可笑しい。そして何と言っても三台目のボロロボットが可愛らしい。埴輪を思わせる顔立ちで、一生懸命人間の動きを真似るのにニヤニヤ。「ATOM」という名前もピッタリだ。つまりロボットにも十分感情移入ができる。

 亡くなったばかりのはずの母の存在が薄い。ロボット・ボクシングのルールが曖昧。ロボットの「命」に対する突込みが甘い。三つの大きな欠点はあれど、気持ちの良い興奮と涙が散りばめられた映画。ハリウッドの良心とはこういうものだ。ヒュー・ジャックマンとダコタ・ゴヨが本当の父と息子に見えてくる。ATOMへの愛情が見えてくる。それだけで十分に映画を信じたくなる。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ