シャッター アイランド

シャッター アイランド “Shutter Island”

監督:マーティン・スコセッシ

出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングスレー、
   ミシェル・ウィリアムス、エミリー・モーティマー、
   マックス・フォン・シドー、パトリシア・クラークソン、
   ジャッキー・アール・ヘイリー、イライアス・コティーズ、
   テッド・レヴィン、ジョン・キャロル・リンチ

評価:★★★




 『シャッター アイランド』の物語そのものには驚くところはほとんどない。映画では案外良く見られる罠が仕掛けられていて、話が中程になると早々に先が読めてくる。真相が明らかになる件になると、やっぱりかと若干落胆してしまうほど。マーティン・スコセッシ監督がわざわざ語る必要のある物語かというと、疑問が残る。

 スコセッシは一体この物語のどこに惹かれたのだろうか。多分古風な怪奇映画を撮ってみたかったのではないかと思うのだ。オープニングの船のショットが、あからさまなスクリーン・プロセスになっているあたり、かなり臭い。あえてレトロ風味のゴシックホラーを狙っているように見える。音楽も美術も美しさとおどろおどろしさを強調したものになっていて、往年の名作映画を連想させるところが多々ある。1950年代前半の赤狩り時代、精神を病んだ凶悪犯が収容されている孤島という舞台設定を使って、趣味良くスコセッシがホラーを魅せていくところが面白い。

 尤も、スコセッシの巧さはこの映画においては必ずしもプラスには働いていない。船が会場を走るショットのスピード感の気持ち良さだとか、圧迫感のある室内でのカメラの切り替えしや編集の妙だとか、幻想場面の魅せ方の鮮やかさだとか(光の使い方、何かを舞わせる演出の巧みさ)、相変わらずのリズム作りの巧さだとか、スコセッシの超一級の技が冴え渡り感心するところも多いのだけれど、その巧さがかえって悪夢的ストーリーの足を引っ張ってもいる。主人公の捜査官は事件を調べれば調べるほど出口のない迷宮に迷い込んでいくのだけれど、踏み入れたら最後、決して抜け出せない悪夢的恐怖の感じはあまり伝わってこない。巧いがゆえに思いがけずあっさりと見られてしまうのだ。まとわりつくような、絡みつくような、ねっとりとした狂気と色気が全編に充満するようなところが欲しいというのに。変質的な色を歪で良いから溢れ出せるべきではなかったか。デヴィッド・リンチだったなら、もっと艶っぽく妖しい空気を作り出せたのではないか、とも思った。

 それでもスコセッシがレオナルド・ディカプリオから見事な演技力を引き出しているのはさすがだ。前半のディカプリオは彼の力量を考えたらどうということもないのだけれど、後半いよいよ主人公が状況に対応できなくなってくるあたりからは抜群の演技センスが光り、眩しくて仕方がない。真相に気づき、自身の内からこみ上げてくる何かが、ディカプリオをきつく抱き締める。もはや彼は自分であって自分ではない。自分だけでコントロールできる限界を超えてしまったような、そんな不安定さが鋭く輝いている。ディカプリオの演技に上限はない。

 いたるところに伏線が散りばめられていて、何気ないセリフも気が抜けない。深読みしようと思えばいくらでもできる言葉が次々登場する。しかし、最も印象に残るのは主人公の最後のセリフだろう。モンスターのまま生き続けるか、善人のまま死んでいくか、どっちが悪いだろうな(Which would be worse, to live as a monster or to die as a good man?)。ディカプリオのセリフ回しとスコセッシのリズム作りの巧さにより、妙に後を引く幕切れになっていることは間違いない。





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