ラスト・アサシン

ラスト・アサシン “Requiem pour une tueuse”

監督:ジェローメ・ル・グリ

出演:メラニー・ロラン、クロヴィス・クロニアック、
   チェッキー・カリョ、クザヴィエ・ガレ、
   クリストファー・スティルス、コッラード・インヴェルニッツィ

評価:★★




 ヒロインは殺し屋なのに銃を持たない。結構なことだ。最近は身分を忘れて、街中でも平気で銃を乱射する殺し屋ばかりだもの。己の仕事に美学を持ち、一般人に迷惑をかけることなく標的を仕留める者こそ、本物の殺し屋だろう。しかし、だからと言って、銃に代わる殺害方法がレモンやハンカチに毒を仕込むというのは、あまりにも地味かもしれない。

 『ラスト・アサシン』にはアクションと呼べる派手な描写が見当たらない。だからそれを補うために心理サスペンスを狙う。ところが、人物の動きが少ないがゆえ、画面にメリハリというものが皆無だ。当然あるべき緊張感も探すのに一苦労を強いられる。世界最高峰の殺し屋であるはずなのに、その実力を示す場面すらないのだ。むしろツメが甘く、素人に毛が生えた程度の動きでしかない。フランスの美しい山中、田舎の風景に癒されている場合ではない。

 ただ、ミステリーの妙味は良く出ている。アクションもサスペンスもないのにどうしてそれが可能だったのか。単調な画面ではあるものの、編集に一工夫仕込まれているのだ。

 実はこの映画、最初から登場人物の立ち位置が丸見えだ。引退を考える女殺し屋。彼女に最後の指令を出す初老の男。その彼に依頼を持ち込む謎の紳士。謎の紳士により女の監視を強要される劇場の支配人。女の標的となるオペラ歌手。女を捕まえる任務を負う元諜報員。それぞれが目的を持って行動していて、その思惑が複雑に交錯する。途中から目的が変更になる者もいる。思惑が丸見えのため、物語を追っているだけのように見える危険を秘めている。謎が謎にならない危険が散らばっている。

 ここで作り手は大胆な勝負に出てる。通常の映画ならば念入りに描くだろうエピソードとエピソードを繋ぎ合わせる場面を次々にカットするのだ。したがって人物の行動に唐突感が浮上する。これが面白い。場面と場面の間に何があったのか、それを想像させることで、この映画ならではの奇妙なリズムを作っている。余白に謎が雪崩れ込み、いつしか予期しなかったコクで満たされる。

 メラニー・ロランを眺める楽しみもある。真っ白な肌。ブルーの瞳、ブラウンのアイメイク、輝くブロンド。まるでアルフレッド・ヒッチコック映画のヒロインのような雰囲気を振り撒くロランが美しい。明るい笑い顔よりも謎めいた微笑がイイ。久しぶりにクールビューティという言葉を思い出す。

 ただ、歌唱場面には苦笑い。かつて歌手を目指していて、オペラ歌手として現場に潜り込むという設定。そしてクライマックスでは大勢の観客の前に立ち、ソロでオペラを歌い上げるのだ。これがどう考えてもロランの声ではなくて、必死に声に口を合わせている様が、うーん、なんだか滑稽に映る。いちばん身を乗り出すべきところで、これはないだろう。





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