トゥルース 闇の告発

トゥルース 闇の告発 “The Whistleblower”

監督:ラリーサ・コンドラッキ

出演:レイチェル・ワイズ、モニカ・ベルッチ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、
   デヴィッド・ストラザーン、ニコライ・リー・コス、アナ・アニシモーワ、
   アレクサンドル・ポトチェアン、ウィリアム・ホープ、
   ベネディクト・カンバーバッチ、リアム・カニンガム

評価:★★




 実話物には大いに警戒する。とりわけ政治が絡んだ実話物は相当の注意を払う。作り物では決して越えることのできない真実の迫力に寄りかかることで、「良い映画」だと錯覚させるシロモノが多いからだ。もちろん事実から学ぶこと、学ぶべきことはあるけれど、それにばかり目を配り、映画としての表現がおざなりになってしまっては何にもならない。

 『トゥルース 闇の告発』で描かれる真実は実に重たい。今から10年ほど前、ひとりの女警官がウクライナからボスニアへ連れ去られてきた少女たちの人身売買問題を告発しようとする物語。少女たちはバーと称した売春宿で働かされる。助けを呼ぼうにも暴力が恐ろしくて動くことができない。現地の警官は賄賂を受け取っている。軍の関係者や国連スタッフまでもがこの悪事に加担している。困っている者を助ける立場であるはずの者たちの、ほとんど開き直りとしか思えない悪事。あまりにも陰湿、あまりにも卑劣。聞いただけで気分が悪くなる。

 作り手はこれを娯楽的に見せることを選んでいる。事実を知ってもらうことは大切だけれど、そのままを映し出してもとっつきにくくて敬遠されてしまうかもしれない。この選択は正解だろう。これまでにも「ラストキング・オブ・スコットランド」(06年)や「ブラッド・ダイヤモンド」(06年)あたりが、ヘヴィーな題材を娯楽的に見せていた。映画製作は問題提起をするのに有効な方法でもある。問題は見せ方だ。これを間違えると、結局堅苦しいだけ、頭でっかちなだけで終わる危険がある。

 作り手が選んだのは、女警官を主人公に正義を問い掛ける物語にするというもの。平行して、親への反抗心から人身売買されてしまう少女の苦悩も描く。どちらも家庭事情を手際良くスケッチしているのがポイントで、刑事には何とか少女を救い出して欲しい、少女には何とか助かって欲しいと、必然的に思わせる。重い題材に彼女たちのドラマを塗すことで、印象を柔らかなものにしている。やりたいことは分かるものの、話自体はありきたりに思える。ヒロインが逆境に負けることなく突き進む物語は、古今東西、どこにでも転がっている。レイチェル・ワイズは役柄に合っているのだけれど…。

 せめて刑事の心の変化をもっと掘り下げても良かったのではないか。彼女は今は別れて暮らしている娘の近くに越してくるための資金調達のために、ボスニア派遣を選んだのだ。信念のために動いたのではない。その彼女が思いがけず正義心を刺激される。そこを突いても良かったのではないか。それか、少女の母親を真ん中に置くのも面白かったかもしれない。突然消えた娘。あてにならない警察。法の壁。母親が心を掻き毟られながら娘を救い出そうと奔走する。救いたい、助かりたいという刑事や少女の思い以上に、複雑な心理が蠢いているはずだ。実際、娘の母の描写は僅かな時間ながら強い印象を残す。

 こういう話は、作り手の立ち位置が気になることがある。志高いがゆえの映画製作なのだろうけれど、作り手の「良い人」アピールの匂いが漂わなくもない。自分は立派だと世間に思われたいという感情。そんな風に考えることこそおかしいと承知しつつ、それを上手に隠して欲しいとも思う。ここでもその匂いがちらつく。

 描かれる事実については全く知らなかったのが恥ずかしい。これだけインパクトのある事件だから、見聞きしていたら強く心に残ったはずだ。こういう悲劇はいたるところに潜んでいるということなのだろう。そしてそれが広く知れ渡ることはほとんどないということだろう。映画としてはさほど感心しなかったものの、描かれる腐敗に胸を掻き毟られたのは事実だ。





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